武田先生のお考え
1.
文科省の基準の説明
文科省が子供達の被ばく限度を20ミリシーベルトにした理由を説明する書類を出しました。法律の限度が1ミリ、暫定的な原子力安全委員会は「子供は10ミリ」と言っているなかで、なぜ、文科省が上限一杯の被曝量を決めたのかという理由は不明ですが、説明には多くの矛盾点があります。
もっとも大きなものは、「100ミリで過剰発がん(福島原発事故によって増えるガン)が0.5%」と記載されています.また、低線量率では「確率的」とされています.
これをわかりやすい言葉で言えば、「1年間に100ミリの場合、10万人の子供あたり500人がガンになる」という事です。
この数値が大きいか小さいかは人によって違うのですが、これまでの考え方は、「10万人に5人ぐらいなら我慢ができる」ということで限度を1ミリにしてありました。
ところが、文科省の同じ説明の中の違うところに、「100ミリ以下ではガンは認められない」と書いています。
このように理由は不明ですが、文科省の説明の特徴は、「子供に被ばくをさせる方向の説明の場合は理解しやすいように書き、子供を守る方向の場合は難しく曖昧に書く」という事になっています.
自然放射線も1年に1.4ミリなのに、2.4ミリと書いて、あたかも自然放射線が多いように見せかけています.この理由は政府が最初の段階で間違った数値を言ったので、それをそのまま使っているからでしょう。
文科省が屁理屈を言わずに、早く子供達のことを考えて、安全な「1ミリ」に戻すように願っています.
2.
「頑張る」とはなにか?
放射線が多いとき、大人が「頑張る」というのは、どんなに譲っても「私たち大人は放射性物質で汚れた野菜を我慢して食べるが、子供には食べさせない」ということでしょう。
もちろん、「大人でも、復興のために我慢して放射性物質で汚れた地元野菜を食べる」などと言うことは外国から見ると「日本人の竹槍精神」に映るでしょう.
「放射性物質を体内に入れない方がよい」というのは、「頑張る」とは正反対で、本来、頑張るなら「せっかく作った野菜だが、放射性物質を体内に入れないために捨てる」と言うことです。
登山でも頂上を目前にしても、遭難を避けるために撤退するという勇気こそが大切なのです.福島、茨城、栃木などの農家、会議所、スーパー等の皆さん、放射性物質を含んだ食材を市民に食べさせることは決して「頑張る」ことでも「郷土を愛する」ことでもありません.
3.
福島の中通り
福島の中通り(福島市から二本松市、郡山市など)の放射線量が減らない。1時間あたり2マイクロぐらいになっていて、地表近くでは4ぐらいの数値もある。
1年は8760時間だから2マイクロというと、18ミリにもなり、子供にはかなり過酷だ.
そういっても、政府や自治体が動かない限り、個人は仕事もありお金の制限もあるので、すぐに移動すると言っても無理だ.私たち大人は何をしつつあるのか?と思い悩む。
連休に少しでも日本海側に連れて行ってあげたい。
4.
比較するものが違う。
今日のある新聞を読んでいたら、女性の記者が書いた「放射線の体に対する影響」に関する記事が載っていた。
そこに驚くべき事が書いてある.これが本当に女性記者の書いたものかと目を疑った.(女性男性という区別ではなく、女性の方が生活を知っているという意味)
「日本人の3分の1がガンで死ぬ(33%)。それに比べると100ミリ被ばくしても0.5%にしか過ぎない」とある。
この論理は次のことと同じだ。
「日本人は100%死ぬ.だから交通事故で1万人死んでも1%だから問題は無い」・・・それは違う。
人間は必ず死ぬ.でも、たとえ病気でも、楽しく自然に生活をして寿命で死ぬのは仕方が無い。でも、交通事故や病気はできるだけ避けるという考えではなかったのか。
放射線の発がんは20年以内に起こる.今、幼児の人は20歳前後までにガンが発症するが、それが0.5%だから「リスクが少ない」というのはどういう頭をしているのだろうか?
もう一つは「ガンで死ぬ人の3割がタバコだから、放射線はタバコより安全だ」という文章が出てくる。これもビックリした.(本当は10万人あたり肺ガンは120人だから、それがすべてタバコとしても、0.12%だが)
タバコは「自分の自由意志」で吸う。リスクの評価では「自分の自由意志で危険に身をさらす場合」と「受け身で危険が来る」場合とでは少なくとも1000倍の安全性を見なければならない」というのが学問だ。
そうすると、タバコでガンになる人が3割(これも疑わしいが)としても、33%(ガン)の0.3だから9.9%、それの1000分の1だから、放射線の危険性は0.0099%、つまり約0.01%でなければならない。
実は「1ミリの被ばく」というのは危険性が0.05%のことで、「タバコを無理矢理吸わされる」という危険性の5倍になる。
なぜ、女性記者がこんな記事を書いたのか、もしお会いする機会があったらお聞きしたいと思う.このような考えが蔓延すると危険な社会になるだろう。また政府も自治体も「放射線の高い地域の人の支援」が遅れるだろう.
5.
海の汚染
今回の原発事故が、チェルノブイリなどより大きいのは、「海洋が汚染された」ということです。大地の汚染も恐ろしいのですが、放射性物質が「動かない」という特徴があります。これに対して海は「水が動き、魚が動く」のでややこしい事になります。
すでに金田海岸や、神奈川のアサリから放射性ヨウ素が、それぞれ103ベクレル、44ベクレル(キログラムあたり)検出されていて、黒潮の反流が神奈川まで来ているのでしょう.
「連休の潮干狩りに子供を連れて行っても安全か?」という深刻な悩みがあります。おおよそ大丈夫とは思いますが、できれば、連休は放射線の低いところにお子さんを連れて行って「放射線疲れ」から少しでも回復させて上げたいと思います.
たとえば福島県の中通りに残っている方は、日本海側にドライブすることはできないでしょうか? 日本海側の森林の小川なら汚染されていませんから、安心です.
6.
基準値を超えている放射線に「心配しすぎ」はない
放射線の障害がややこしいのは「確率的」ということです。わかりにくいのですが、10万人の人が100ミリ被ばくすると50人がガンになります。でも、そのガンが「放射線をあびたからなった」のか、「普通の病気としてガンになった」のか、個人個人では判らないということです。
チェルノブイリの時でも、子供の多くがガンになりましたが、「事故前では10万人あたり2人の甲状腺ガンが見られたが、事故後は5000人になったので、チェルノブイリの影響と見られる」という表現になっています。
つまり、「A君のガンは福島原発が原因だ」と科学的に証明できる手段が無いのです。
おそらく、国も自治体もそれを良く判っていて「対策を取らなくても、訴訟を起こされることはないし、起こされても証明できないから大丈夫」と考えていると思います.
子供の甲状腺ガンは被ばく後、4年目からでて、7年目ぐらいになるとハッキリしてきますが、大人のガンは10年以上、かかります。
その時代には、今の首相や官房長官、文科省の大臣、自治体の長はいないでしょう。
だから、私は政府や自治体を少し諦めて、「個人でできる限り被曝量を減らしておこう」という方針なのです。一つの地域にこれからガンが100人増えても、注意している方はそれだけ安心だからです.それも「永久」ではなく、放射線はだんだん減ってくるから期限付きです.
また、将来のことを考えると、「その地域でやれる注意をして、回りの人より被曝量が少ない」ということだけで安心できます。本当はすべての子供のことが問題ですが、せめて注意をしておけば、それだけ安全です.被曝量に応じてガンが発生しますから、何気なく、そしてできるだけの注意をしましょう。
また母乳をあげているお母さんは、お母さんが被ばくすると体内の放射性物質がお乳を通って赤ちゃんに行きますから、赤ちゃんは2倍、被ばくする事になりますので、より注意が必要です.
7.
放射線の特徴を活かして安全な生活
できるだけ地面から離れよう! 赤ちゃんはだっこしよう!
3月11日以前の食材を使おう!
腐らないものは16日経ってから食べよう(ヨウ素の半減期は8日だから、16日で4分の1になり、かなり安全。冷凍庫の中でも同じく減っていく。またある食品から放射線がでていても、ポリ袋やラップに包んでおけば他の食材を汚すこともない)!
まだ福島原発から1日に150兆ベクレルの放射性物質がでていますが、一時期より減ったので、東京近郊では外で洗濯物を干すことができる時期になってきた。取り込むときにマスクをしてはたいて「黄砂のような放射性物質」をはらって取り込もう!
8.
数値をだして安心した生活と感謝の心
連休で時間が取れる人は、「これまでの被曝量」と「来年、3月11日までの被曝量」を計算して、今後の生活を決める時期です.また、移動を伴う人は「移動しない場合」と「移動した場合」にわけて数値をだして考えると良いと思います.(近々、計算方法を書きます.)
また、福島県から他県に移ってくる人を温かく歓迎しよう。私たちは福島原発のおかげで今までテレビを見たり、エアコンを使ったりしてきました。
それを支えてくれた福島の人に今こそ、恩返しをすることができます。
(平成23年4月24日 午後1時 執筆) 武田邦彦
文科省の基準の説明
文科省が子供達の被ばく限度を20ミリシーベルトにした理由を説明する書類を出しました。法律の限度が1ミリ、暫定的な原子力安全委員会は「子供は10ミリ」と言っているなかで、なぜ、文科省が上限一杯の被曝量を決めたのかという理由は不明ですが、説明には多くの矛盾点があります。
もっとも大きなものは、「100ミリで過剰発がん(福島原発事故によって増えるガン)が0.5%」と記載されています.また、低線量率では「確率的」とされています.
これをわかりやすい言葉で言えば、「1年間に100ミリの場合、10万人の子供あたり500人がガンになる」という事です。
この数値が大きいか小さいかは人によって違うのですが、これまでの考え方は、「10万人に5人ぐらいなら我慢ができる」ということで限度を1ミリにしてありました。
ところが、文科省の同じ説明の中の違うところに、「100ミリ以下ではガンは認められない」と書いています。
このように理由は不明ですが、文科省の説明の特徴は、「子供に被ばくをさせる方向の説明の場合は理解しやすいように書き、子供を守る方向の場合は難しく曖昧に書く」という事になっています.
自然放射線も1年に1.4ミリなのに、2.4ミリと書いて、あたかも自然放射線が多いように見せかけています.この理由は政府が最初の段階で間違った数値を言ったので、それをそのまま使っているからでしょう。
文科省が屁理屈を言わずに、早く子供達のことを考えて、安全な「1ミリ」に戻すように願っています.
2.
「頑張る」とはなにか?
放射線が多いとき、大人が「頑張る」というのは、どんなに譲っても「私たち大人は放射性物質で汚れた野菜を我慢して食べるが、子供には食べさせない」ということでしょう。
もちろん、「大人でも、復興のために我慢して放射性物質で汚れた地元野菜を食べる」などと言うことは外国から見ると「日本人の竹槍精神」に映るでしょう.
「放射性物質を体内に入れない方がよい」というのは、「頑張る」とは正反対で、本来、頑張るなら「せっかく作った野菜だが、放射性物質を体内に入れないために捨てる」と言うことです。
登山でも頂上を目前にしても、遭難を避けるために撤退するという勇気こそが大切なのです.福島、茨城、栃木などの農家、会議所、スーパー等の皆さん、放射性物質を含んだ食材を市民に食べさせることは決して「頑張る」ことでも「郷土を愛する」ことでもありません.
3.
福島の中通り
福島の中通り(福島市から二本松市、郡山市など)の放射線量が減らない。1時間あたり2マイクロぐらいになっていて、地表近くでは4ぐらいの数値もある。
1年は8760時間だから2マイクロというと、18ミリにもなり、子供にはかなり過酷だ.
そういっても、政府や自治体が動かない限り、個人は仕事もありお金の制限もあるので、すぐに移動すると言っても無理だ.私たち大人は何をしつつあるのか?と思い悩む。
連休に少しでも日本海側に連れて行ってあげたい。
4.
比較するものが違う。
今日のある新聞を読んでいたら、女性の記者が書いた「放射線の体に対する影響」に関する記事が載っていた。
そこに驚くべき事が書いてある.これが本当に女性記者の書いたものかと目を疑った.(女性男性という区別ではなく、女性の方が生活を知っているという意味)
「日本人の3分の1がガンで死ぬ(33%)。それに比べると100ミリ被ばくしても0.5%にしか過ぎない」とある。
この論理は次のことと同じだ。
「日本人は100%死ぬ.だから交通事故で1万人死んでも1%だから問題は無い」・・・それは違う。
人間は必ず死ぬ.でも、たとえ病気でも、楽しく自然に生活をして寿命で死ぬのは仕方が無い。でも、交通事故や病気はできるだけ避けるという考えではなかったのか。
放射線の発がんは20年以内に起こる.今、幼児の人は20歳前後までにガンが発症するが、それが0.5%だから「リスクが少ない」というのはどういう頭をしているのだろうか?
もう一つは「ガンで死ぬ人の3割がタバコだから、放射線はタバコより安全だ」という文章が出てくる。これもビックリした.(本当は10万人あたり肺ガンは120人だから、それがすべてタバコとしても、0.12%だが)
タバコは「自分の自由意志」で吸う。リスクの評価では「自分の自由意志で危険に身をさらす場合」と「受け身で危険が来る」場合とでは少なくとも1000倍の安全性を見なければならない」というのが学問だ。
そうすると、タバコでガンになる人が3割(これも疑わしいが)としても、33%(ガン)の0.3だから9.9%、それの1000分の1だから、放射線の危険性は0.0099%、つまり約0.01%でなければならない。
実は「1ミリの被ばく」というのは危険性が0.05%のことで、「タバコを無理矢理吸わされる」という危険性の5倍になる。
なぜ、女性記者がこんな記事を書いたのか、もしお会いする機会があったらお聞きしたいと思う.このような考えが蔓延すると危険な社会になるだろう。また政府も自治体も「放射線の高い地域の人の支援」が遅れるだろう.
5.
海の汚染
今回の原発事故が、チェルノブイリなどより大きいのは、「海洋が汚染された」ということです。大地の汚染も恐ろしいのですが、放射性物質が「動かない」という特徴があります。これに対して海は「水が動き、魚が動く」のでややこしい事になります。
すでに金田海岸や、神奈川のアサリから放射性ヨウ素が、それぞれ103ベクレル、44ベクレル(キログラムあたり)検出されていて、黒潮の反流が神奈川まで来ているのでしょう.
「連休の潮干狩りに子供を連れて行っても安全か?」という深刻な悩みがあります。おおよそ大丈夫とは思いますが、できれば、連休は放射線の低いところにお子さんを連れて行って「放射線疲れ」から少しでも回復させて上げたいと思います.
たとえば福島県の中通りに残っている方は、日本海側にドライブすることはできないでしょうか? 日本海側の森林の小川なら汚染されていませんから、安心です.
6.
基準値を超えている放射線に「心配しすぎ」はない
放射線の障害がややこしいのは「確率的」ということです。わかりにくいのですが、10万人の人が100ミリ被ばくすると50人がガンになります。でも、そのガンが「放射線をあびたからなった」のか、「普通の病気としてガンになった」のか、個人個人では判らないということです。
チェルノブイリの時でも、子供の多くがガンになりましたが、「事故前では10万人あたり2人の甲状腺ガンが見られたが、事故後は5000人になったので、チェルノブイリの影響と見られる」という表現になっています。
つまり、「A君のガンは福島原発が原因だ」と科学的に証明できる手段が無いのです。
おそらく、国も自治体もそれを良く判っていて「対策を取らなくても、訴訟を起こされることはないし、起こされても証明できないから大丈夫」と考えていると思います.
子供の甲状腺ガンは被ばく後、4年目からでて、7年目ぐらいになるとハッキリしてきますが、大人のガンは10年以上、かかります。
その時代には、今の首相や官房長官、文科省の大臣、自治体の長はいないでしょう。
だから、私は政府や自治体を少し諦めて、「個人でできる限り被曝量を減らしておこう」という方針なのです。一つの地域にこれからガンが100人増えても、注意している方はそれだけ安心だからです.それも「永久」ではなく、放射線はだんだん減ってくるから期限付きです.
また、将来のことを考えると、「その地域でやれる注意をして、回りの人より被曝量が少ない」ということだけで安心できます。本当はすべての子供のことが問題ですが、せめて注意をしておけば、それだけ安全です.被曝量に応じてガンが発生しますから、何気なく、そしてできるだけの注意をしましょう。
また母乳をあげているお母さんは、お母さんが被ばくすると体内の放射性物質がお乳を通って赤ちゃんに行きますから、赤ちゃんは2倍、被ばくする事になりますので、より注意が必要です.
7.
放射線の特徴を活かして安全な生活
できるだけ地面から離れよう! 赤ちゃんはだっこしよう!
3月11日以前の食材を使おう!
腐らないものは16日経ってから食べよう(ヨウ素の半減期は8日だから、16日で4分の1になり、かなり安全。冷凍庫の中でも同じく減っていく。またある食品から放射線がでていても、ポリ袋やラップに包んでおけば他の食材を汚すこともない)!
まだ福島原発から1日に150兆ベクレルの放射性物質がでていますが、一時期より減ったので、東京近郊では外で洗濯物を干すことができる時期になってきた。取り込むときにマスクをしてはたいて「黄砂のような放射性物質」をはらって取り込もう!
8.
数値をだして安心した生活と感謝の心
連休で時間が取れる人は、「これまでの被曝量」と「来年、3月11日までの被曝量」を計算して、今後の生活を決める時期です.また、移動を伴う人は「移動しない場合」と「移動した場合」にわけて数値をだして考えると良いと思います.(近々、計算方法を書きます.)
また、福島県から他県に移ってくる人を温かく歓迎しよう。私たちは福島原発のおかげで今までテレビを見たり、エアコンを使ったりしてきました。
それを支えてくれた福島の人に今こそ、恩返しをすることができます。
(平成23年4月24日 午後1時 執筆) 武田邦彦
ラベル: 社会
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