2011年4月23日土曜日

武田先生のご意見です

現在の問題とコメント


1. 20ミリシーベルトの衝撃
ICRPや日本の法律で決まっていた、年間1ミリシーベルトという制限は、「世界の誰でも、安心して転勤したり、旅行したりできる。世界のどこの食材でも安心して食べることができる。世界の工業製品も汚染されていない」という意味をもつ数値ですが、それを20ミリシーベルトにしたから、日本は「汚れた国」になりました。
遠く、北海道も九州も20ミリですから、日本に観光客が来なくなり、日本製品が輸入制限を受けるのは仕方ありません。
日本は国際的に見れば20倍、汚れた国です.国際的評判を取り戻し環境客に安心して来ていただくためにも、日本人の健康のためにも早く1ミリに戻したいものです。


2. 文科省のトリック
読者からの情報で、文科省の測定しているものは「外部だけ」ということがわかりました。また計算式は室内にいるときに40%の被ばく率であることもわかりました。
現在の段階では木造の室内は外部と変わりませんので、文科省の計算(1時間3.8マイクロまで良いという計算)、
(3.8マイクロ×8+1.52×16)×365=20マイクロ
はあまりに子供に可哀想で、
0.57マイクロ×24×365=(10/2)マイクロ
に変えなければいけません(原子力安全委員会は子供は10マイクロと行っていますので、文科省に権限無し。また、10を2で割っているのは文科省の数字が外部だけだから)0.57を越えたら、教育委員会は登校させない方が良いと思います.これでも規制値の5倍です。
今のところ、外部=内部 として2倍にしていますが、これから長期になるので、ヨウ素やセシウムの濃度から正確に出していくことになると思います。


3. 放射性物質を避けるのは大げさでも過保護でもありません!
回りがあまり注意していないのに自分だけ、ということで疎外感を持たれている方もおられますが、初期にできるだけ被ばくを避けるのは重要で、しかも政府の発表が少しずつ危険側になっていて、さらに放射線の測定が少なめにでていることもあり、あまり気にせずに少しの間、注意をした方が良いでしょう。
少しでも汚染された食材を子供に与えたくないというのは、ごく普通の母です.ついこの前(原発事故前)まで、今「放射線は安全だ」と行っている、当のその人が「放射線は少しでも危ない」と良い、ICRPの委員だったのです.
原発事故が起こったら、日本人の放射線の耐性が高くなるなどあり得ません.でも、これだけ政府や専門家が間違っている時には、あまり人に呼びかけず、ご自分はご自分のお子さんを守ることをお薦めします。


4. 道路は危険
道路の放射線が高いのは、多くの方からのご連絡でハッキリしています.お子さんをあまり道路を歩かせないように、また道路工事なども土煙があがるので、危険です.
あるお母さんが娘さんのところで測ってきたデータを送っていただきましたが、やはり4階など高いところは放射線が減っているようです.
また、国の測定値は常に2分の1ぐらいなので、それもある程度頭に入れてください。私の計算式はそれも入っていますので、大丈夫です.


5. SPEEDIをかくしたこと
税金を約200億円使い、原発に事故があった時に放射性物質の流れを計算するSPEEDIが事故当時から計算していて、1ヶ月で2000枚の計算結果があったのに、2まいだけ発表した。
理由は、内閣官房の副官房長官の命令と言われるが、原子力安全委員会は首相直属で、首相の「隠せ!」という命令があったことになる。
「菅首相。何も隠すような命令は出していないと行っておられましたが?」


6. 福島から遠い人へ
現在の放射線の動きから見ると、静岡、山梨、新潟、山形県北西部、秋田、岩手、青森、北海道とそれより福島県から遠いところは「安全地帯」です。
被ばくの原因の4つ、(空間、体内、水、食材)のうち、遠い人は「食材」だけ注意してあとは大丈夫です.
理由は食材だけは福島(東部)のものを食べれば「福島に行ったと同じ」になるからです。水は近くに水源がありますから、少なくとも、箱根、小仏、碓井峠、清水トンネル・・・などを越えると水はそこが分水嶺ですから、遠くに行きません。
遠い人もあまり近くの人に呼びかけず、自分のご家族を守ってください。当面、福島近県の農産物と関東から宮城沖までの小魚は避けることです。中型大型の魚に出てくるのはもう少し後になります.


7. 母乳のヨウ素について
言いにくいのですが、ショックは受けないでください。
母乳に放射性ヨウ素がでるのは、お母さんがマスクをしないで呼吸するからです.人間は呼吸をしないと生きていけないのですが、その時、体内に放射性物質が入り、それが母乳にでます。放射線の強さが自然放射線より高いということは、自分の目の前に小さなチリが浮いているという事ですから、それを吸ってしまうのです。
だから、当然のことで、放射線の高い地域では、お母さんは母乳をやる限りマスクが必要です.
つまり、赤ちゃんが被ばくする量は同じ場所にいるお母さんと同じですから、放射線の量が安全なところはお母さんも赤ちゃんも安全です.「問題がない」ということはありませんが、「赤ちゃんがお母さんと同じ程度、被ばくをする」ということですが、赤ちゃんは呼吸で体内に入り、お母さんから母乳でお母さんが呼吸で体内に入った放射性物質をもらいますから、ちょっと注意が必要でしょう。
計算としてはお母さんの係数(空気、吸い込み、水、食材)の内、赤ちゃんの食材の係数を0,2ぐらい足す必要があると思います.


8. 柏の放射線について
柏の東大の測定値が高い問題は測定の問題です.
放射線は場所によってかなり違います.それも含めて「1ミリシーベルト」が決まっています。つまり、人間はいろいろなところに行きますし、体調も違うし・・・ということで、若干の余裕をとって1ミリとしています。
放射線量は場所によって差が大きいので、ある程度の差はあります。やや高めの値を取っておくのが良いと思います。
ちなみに、私の示している計算は、「公的な値を使う.それは低めだ」ということを含んで、やや係数を高くしてあります.


9. 土の除染は今がチャンス
チェルノブイリのデータでは、セシウムは1年に1センチしみこみます.また水溶性のものもあるので、日本では梅雨になると深くしみこむと考えられます。
東電の工程表を見ると、原発からの放射性物質はかなり減ってきますので、今がチャンスです.除染の対象はセシウムに絞るのがよく、現在ではまだ40日ぐらいしか経っていないので、土が動いていないところは表面の5ミリから1センチを除去し、それをポリ袋に入れてしばらくは隅の方に入れておき、後に自治体が引き取ってくれるようになったら出すのが良いでしょう。セシウムは「カリウム」と似ていますが、原子炉からでるときに高熱に曝されていますし、土の中で有機物と反応して溶けにくくなることもあります。
そこで感覚としては、「水に溶けやすいものと、細かい粒状のものが混じっている」という感じが良いでしょう.またグラウンドなどでは表面をトンボで薄く取ることがまず必要です.


10. 東京湾は大丈夫と思いますが・・・
連休が近づき、お子さんを東京湾などで潮干狩りなどをさせたいと思っておられるお母さんも多いのではないかと思います.ギリギリ大丈夫かなという感じです.
すでに、3月に海水に漏れた放射性物質は黒潮の反流で南に下がっていると思われますが、銚子の付近から折り返しているのか、それともそのまま細く南下しているのは、まだデータがありません。
時期的には東京湾には来ていないと考えられます.


(平成23年4月22日 午前10時 執筆)

                   武田邦彦

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