武田先生のご意見
被ばく・・・野菜(ホウレンソウ)
今回から、被ばく量を減らすために何をしていかなければならないかについて、個別に整理をしていきたいと思います.
かならずしも整理は「系統的」ではありませんが、一つ一つの検討を通じて、「被ばくを避ける」というのがどういうことかということの理解を深めたいと思います.
第一回はホウレンソウを中心に考えてみます.
茨城県日立市のホウレンソウの汚染を文章で説明します.
日立市のホウレンソウの汚染の測定は3月19日の出荷分から行われていますが、その時の放射性ヨウ素は1キログラムあたり14500ベクレルでした。
これまで「1時間あたりのシーベルト」で頭の中を整理していたのに、1キログラムあたりのベクレルなどと言われると換算が容易ではありません。
そこで、ここでは1キログラムのベクレルを「野菜を1日350グラム食べる(標準の大人の食べる量)」として計算して「1時間あたりのシーベルト」で示す計算をします。
・・・ベクレルからシーベルトへの計算方法(忘れて良い)・・・
ヨウ素の場合、2000ベクレルが44マイクロシーベルトですから(このブログでかつて示した概算と少し違います.今回からの方がやや厳密です。この計算はさらに複雑なので、ここでは割愛します)、ベクレルに44をかけて2000で割るとマイクロシーベルトになります。
たとえば、3月19日にとれた日立市のホウレンソウには14500ベクレル(1キログラムあたり)の放射性ヨウ素がついていましたから、320マイクロシーベルトになります。
これは1キログラムあたりなので、一日350グラムのホウレンソウ(野菜)を食べるとすると、一日に野菜(まずはホウレンソウ岳を食べるとして)から体の中で被ばくする放射線は、1日112マイクロシーベルト(1時間4.7マイクロ)になります。
・・・・・・・・・
ここで二つのことについて、頭の整理をしておかなければなりません。
まず第一には「野菜はホウレンソウだけではないのに、ホウレンソウだけ食べるという計算で良いの?」ということです。
そして、第二には、この計算でもとめた4.7マイクロシーベルトと、たとえばこの日の日立市の空間の放射線量が5マイクロシーベルトとすると、それと足して9.7マイクロとして良いの?ということです。
・・・・・・
まず第一点ですが、ホウレンソウが汚染されているとき、「ホウレンソウだけは茨城産を買い、そのほかの野菜は外国産を買った」という場合は、ホウレンソウだけを考えれば良いので、1日の野菜350グラムの内、普通はホウレンソウは20グラムぐらいしか食べませんから、112マイクロシーベルトに20をかけて350で割りますから、6.4マイクロシーベルト(1時間0.3マイクロ)となります。
このように計算して政府は「健康に影響はない」と言ったのですが、実際には、ホウレンソウが汚染されている時には、他の野菜も汚染されています.
事実、3月20日ぐらいの時点では鉾田市産のパセリも3500ベクレルと相当、汚染されていました。
つまり「野菜の地産地消」が怖いのは、「どれもこれも汚れている」という状態だからです.
すべて「地産地消」で行くと、被ばくとしては「ホウレンソウだけを食べた」という状態とそれほど違いません.
もし、「地元の野菜を半分、遠いところの野菜を半分」ぐらいが普通とすると、112マイクロシーベルトを半分にして56マイクロシーベルト(1時間2.3マイクロ)ぐらいということになります。
これは1年にすると、20ミリシーベルトになり、危険です。
政府が「ホウレンソウだけを食べ続けるわけではないので、安全だ」と言ったのは「ウソ」と言っても良いのです. 放射性物質はホウレンソウだけに降るのではないからです。
実は、私が「汚染されている時には地産地消は危険です」と言ったり、「イカナゴだけを食べて、呼吸はしないのですか?」とテレビで言ったりしていたのはこのことです.
つまり「足し算」だからです。
もし、私たちの政府が、私たちに誠意を持って発表してくれれば混乱は無いのですが、「(国民を知らないうちに被ばくさせるために、)少なめ少なめに言う」というのを続けているので、とてもやっかいです.
・・・もう少し頑張って、次の問題も・・・
第二に、野菜から体の中に入る1日4.7マイクロと、その時に空間の放射線が5マイクロとすると、それは足し算できるの?という問題です.
これはひどくやっかいな計算が必要です.
体内被曝は、あるホウレンソウを食べたときに、その人が50年間(子供はすこし違う計算)であびる「合計の放射線量」です。
なーんだ。それじゃ、56マイクロを50年(18250日)で割るのだから、問題ないじゃないかと思うでしょうが、違うのです.
放射線ヨウ素の半減期は8日ですから、最初の8日で2分の1、次の8日で16分の1、そしてさらに次の8日で32分の1の放射線が出ます。
だから、約1ヶ月(32日)で、56マイクロの内、{0.5+0.25+0.125+0.0625=0.9375}、つまりほぼ同じ量の被ばくを1ヶ月で受けてしまうのです。
ですから、簡単に計算するには、最初の8日間だけ取って、56マイクロの2分の1、つまり28マイクロを8でわると、1日3.5マイクロとなります。
実はさらに面倒なのですが、それは「次の日は野菜を食べた?」ということがあるからです。次の日もホウレンソウやパセリを食べると、また新たにそれが付け加わります.
つまり、昨日食べたホウレンソウからは4分の1、今日のホウレンソウからは2分の1という面倒なことになります。
・・・・・・・・・
あまり計算が続いて疲れてきたと思いますので、今日はこのぐらいにして、一応の結論を出しておきたいと思います. 私も計算間違いをしているのではないかとやや心配です. どなたか計算に強い人が検算していただくと助かります.
今日の結論
1.
事故直後、ホウレンソウなどの野菜は汚れていた、
2.
普通に野菜を食べると、食材全体では、空気中の放射能と同じぐらいに被ばくする(私が被曝量計算で4をかける時に、食材からの分を入れてくださいと言っていたことがこれです)、
3.
被曝量を正確に計算するのはかなり難しく、すぐ「健康に影響がない」などとは言えない、
4.
「地産地消」がもっとも危険、
5.
3月に茨城の農家の方は、消費者に安心して食べることができる食材を提供するという信念を持って、野菜を出荷するべきではなかった、
6.
茨城県知事は「野菜の規制値をゆるめろ」と政府にかけあうべきではなかった、
などが判ります.
このことは生活で被曝量を減らすのにもっとも大切な事ですから、また時間を見て書きます.
(平成23年4月28日 午前9時 執筆) 武田邦彦
今回から、被ばく量を減らすために何をしていかなければならないかについて、個別に整理をしていきたいと思います.
かならずしも整理は「系統的」ではありませんが、一つ一つの検討を通じて、「被ばくを避ける」というのがどういうことかということの理解を深めたいと思います.
第一回はホウレンソウを中心に考えてみます.
茨城県日立市のホウレンソウの汚染を文章で説明します.
日立市のホウレンソウの汚染の測定は3月19日の出荷分から行われていますが、その時の放射性ヨウ素は1キログラムあたり14500ベクレルでした。
これまで「1時間あたりのシーベルト」で頭の中を整理していたのに、1キログラムあたりのベクレルなどと言われると換算が容易ではありません。
そこで、ここでは1キログラムのベクレルを「野菜を1日350グラム食べる(標準の大人の食べる量)」として計算して「1時間あたりのシーベルト」で示す計算をします。
・・・ベクレルからシーベルトへの計算方法(忘れて良い)・・・
ヨウ素の場合、2000ベクレルが44マイクロシーベルトですから(このブログでかつて示した概算と少し違います.今回からの方がやや厳密です。この計算はさらに複雑なので、ここでは割愛します)、ベクレルに44をかけて2000で割るとマイクロシーベルトになります。
たとえば、3月19日にとれた日立市のホウレンソウには14500ベクレル(1キログラムあたり)の放射性ヨウ素がついていましたから、320マイクロシーベルトになります。
これは1キログラムあたりなので、一日350グラムのホウレンソウ(野菜)を食べるとすると、一日に野菜(まずはホウレンソウ岳を食べるとして)から体の中で被ばくする放射線は、1日112マイクロシーベルト(1時間4.7マイクロ)になります。
・・・・・・・・・
ここで二つのことについて、頭の整理をしておかなければなりません。
まず第一には「野菜はホウレンソウだけではないのに、ホウレンソウだけ食べるという計算で良いの?」ということです。
そして、第二には、この計算でもとめた4.7マイクロシーベルトと、たとえばこの日の日立市の空間の放射線量が5マイクロシーベルトとすると、それと足して9.7マイクロとして良いの?ということです。
・・・・・・
まず第一点ですが、ホウレンソウが汚染されているとき、「ホウレンソウだけは茨城産を買い、そのほかの野菜は外国産を買った」という場合は、ホウレンソウだけを考えれば良いので、1日の野菜350グラムの内、普通はホウレンソウは20グラムぐらいしか食べませんから、112マイクロシーベルトに20をかけて350で割りますから、6.4マイクロシーベルト(1時間0.3マイクロ)となります。
このように計算して政府は「健康に影響はない」と言ったのですが、実際には、ホウレンソウが汚染されている時には、他の野菜も汚染されています.
事実、3月20日ぐらいの時点では鉾田市産のパセリも3500ベクレルと相当、汚染されていました。
つまり「野菜の地産地消」が怖いのは、「どれもこれも汚れている」という状態だからです.
すべて「地産地消」で行くと、被ばくとしては「ホウレンソウだけを食べた」という状態とそれほど違いません.
もし、「地元の野菜を半分、遠いところの野菜を半分」ぐらいが普通とすると、112マイクロシーベルトを半分にして56マイクロシーベルト(1時間2.3マイクロ)ぐらいということになります。
これは1年にすると、20ミリシーベルトになり、危険です。
政府が「ホウレンソウだけを食べ続けるわけではないので、安全だ」と言ったのは「ウソ」と言っても良いのです. 放射性物質はホウレンソウだけに降るのではないからです。
実は、私が「汚染されている時には地産地消は危険です」と言ったり、「イカナゴだけを食べて、呼吸はしないのですか?」とテレビで言ったりしていたのはこのことです.
つまり「足し算」だからです。
もし、私たちの政府が、私たちに誠意を持って発表してくれれば混乱は無いのですが、「(国民を知らないうちに被ばくさせるために、)少なめ少なめに言う」というのを続けているので、とてもやっかいです.
・・・もう少し頑張って、次の問題も・・・
第二に、野菜から体の中に入る1日4.7マイクロと、その時に空間の放射線が5マイクロとすると、それは足し算できるの?という問題です.
これはひどくやっかいな計算が必要です.
体内被曝は、あるホウレンソウを食べたときに、その人が50年間(子供はすこし違う計算)であびる「合計の放射線量」です。
なーんだ。それじゃ、56マイクロを50年(18250日)で割るのだから、問題ないじゃないかと思うでしょうが、違うのです.
放射線ヨウ素の半減期は8日ですから、最初の8日で2分の1、次の8日で16分の1、そしてさらに次の8日で32分の1の放射線が出ます。
だから、約1ヶ月(32日)で、56マイクロの内、{0.5+0.25+0.125+0.0625=0.9375}、つまりほぼ同じ量の被ばくを1ヶ月で受けてしまうのです。
ですから、簡単に計算するには、最初の8日間だけ取って、56マイクロの2分の1、つまり28マイクロを8でわると、1日3.5マイクロとなります。
実はさらに面倒なのですが、それは「次の日は野菜を食べた?」ということがあるからです。次の日もホウレンソウやパセリを食べると、また新たにそれが付け加わります.
つまり、昨日食べたホウレンソウからは4分の1、今日のホウレンソウからは2分の1という面倒なことになります。
・・・・・・・・・
あまり計算が続いて疲れてきたと思いますので、今日はこのぐらいにして、一応の結論を出しておきたいと思います. 私も計算間違いをしているのではないかとやや心配です. どなたか計算に強い人が検算していただくと助かります.
今日の結論
1.
事故直後、ホウレンソウなどの野菜は汚れていた、
2.
普通に野菜を食べると、食材全体では、空気中の放射能と同じぐらいに被ばくする(私が被曝量計算で4をかける時に、食材からの分を入れてくださいと言っていたことがこれです)、
3.
被曝量を正確に計算するのはかなり難しく、すぐ「健康に影響がない」などとは言えない、
4.
「地産地消」がもっとも危険、
5.
3月に茨城の農家の方は、消費者に安心して食べることができる食材を提供するという信念を持って、野菜を出荷するべきではなかった、
6.
茨城県知事は「野菜の規制値をゆるめろ」と政府にかけあうべきではなかった、
などが判ります.
このことは生活で被曝量を減らすのにもっとも大切な事ですから、また時間を見て書きます.
(平成23年4月28日 午前9時 執筆) 武田邦彦
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