2011年3月21日月曜日

眠い、もう一度眠ろうと思っています

2011-03-19 11:59:11
福島原発で起きていることテーマ:ブログ
私の大切な方へ



話題が話題なのでちょっと固い言い回しになりました。長文ですが読んでみてください。少し安心すると思います。


福島第一原発は、想定外の強度の地震を受けました。これ以上の規模の地震はないだろうとされた地震の数倍のパワーの地震と津波がおそったわけですから、損傷は免れません。(マグニチュードが0.2違うだけで2倍のエネルギーになります)

しかし自動停止プロセスで「原子炉は停止」することに成功しました。冷却さえ続けられれば、問題は大きくなりません。でも怖くなるのもしょうがないムードです。電話やメールを友人と交わしていると、原発の問題を過剰に捉え、外出を控えたり、心配で不安になっている方が多いことが分かりました。私はいま海外にいます。誰よりも安全なところにいる後ろめたさが正直あります。なので、私にできることは、いま起きていることを正確に、分かりやすく説明することで、少しでも安心してもらうことしかないと思いました。

私は学生時代に茨城県東海村の原子力発電所で放射能を用いた実験をしていたことがあります。その実験前に放射能について学び、放射線取扱主任者資格を得ています。多少なりとも科学的知識があるつもりです。これからお伝えすることは、私の私見です。しかし、慎重に国内外の専門家の分析を読み、正しいと信じて書いたものです。情報が錯綜するなか、少しでも役にたてば嬉しく思います。

この文章は、もっぱら東京圏に住む、家族、友人の方に安心していただくために書いたもので、福島で問題に直面している方には「東京は安心だ」という話ばかりで不快なものであると思います。しかし、私にできることは東京圏の自分の大切な人を安心させることしかありません。何らかの経路でこの文書を読まれた福島の方には心からお詫び申し上げます。

ここ3日間で収集した情報をもとに原発の状態をできるだけ正確に、わかりやすくまとめてみました。(17日夜時点) 本来、家族、友人宛の文書でしたが、公開するこにしました。私はジャーナリストでも専門家でもありません。ですから、すべてにおいて完璧をもとめないでください。しかし、情報をきちんと整理すると「わからなかったこと」が「理解できる」ようになります。自分自身もそうでした。
「わからない」から「不安」なのだと思います。その「不安」が少しでも解消されたら幸いです。


いくつかの項目にわけて理解しおいたほうが安心なことをお伝えします。


1、 福島原発で「今何がおきているか」、「どのような対策をしているか」を政府を通じてリアルタイムに、正確に知ることは不可能です。

いくつかの理由で政府はリアルタイムで事実を知らせたくないのです。
そして「政府もリアルタイムでは知らない」ことも多いのです。

「よい政府」「理想的な政府」だとしても同様です。政府は(伝え方や、能力の差はあれ)国民の安全(少しでも被害、2次被害を減らす)と経済機能の維持を真剣に考えています。このような未曾有の事態に対して、政府が責任を取ることも、責任逃れをすることもできるはずがありません。可能な限りベストを尽くすことしか(ほんとんどの)政府関係者は考えていないのです。

東京電力が曖昧な答えをしているという批判がありますが、これも致し方ないことです。爆発が起きることも度々あり、防護服を着ていても、放射能被曝の1日上限に達する15分から30分程度しか施設の近くで作業できません。何が起きているか「見に行く」だけでも大変なのです。しかも測定機器も壊れているものが多い。それほど多くの確かな情報を東京電力も持ち得ないのです。彼らはプロフェッッショナルなので、多少なりとも「予想」はできると思います。「可能性」を語ることもできると思います。ですが、「予想」や「可能性」を語ることは、世の中を混乱させるだけです。


東京電力は、民間企業としてダメージを最小にしたいと考えているはずです。公益企業として、放射能汚染を最小に留めたいと考えていることも疑う余地がありません。そして彼らは、これほどの重大事を上手に話すような訓練も、経験もしていません。観測された事実以外の推論を話すことは極力さけるようにしていますから、会見はぎこちなくなります。そして、もし重要な事実が出てきたら「政府」が説明したがるでしょう。東京電力及び関係各機関はプロフェッショナルとしてできる限りのことをしています。まず彼らが「いま行っていること」へ不信感を持つのは止めましょう。40年以上使おうとした等の政策的過ちは別です。いま起きている問題への対応についてです。
ましてや、自衛隊、警察、消防は全力をつくしています。


また、政府の対応を信じられるか、首相にまかせていて大丈夫か、という声を聞きますが、放射能に関する重大な事実を、どう発表すべきかは「自分の意見」を入れられるような問題ではないのです。対処策に首相が意見をいれる余地もありません。高度に技術的な問題が生命に危機を与えているとき、解決策は専門家によってのみしか考えられません。アポロ13号が危機的状況に陥ったとき、米国大統領が何かできたでしょうか。何もできませんでした。NASAの精鋭と、現場にいる宇宙飛行士で解決したのです。原発関係者、警察、自衛隊、消防は最善の策を考え、不眠不休で働いています。国際的な監視もされており、チュルノブイリでロシア政府がもみ消そうとしたようなことは、日本政府にはできません。「政府が疑う」理由はありません。

政府は信用はできますが、「上手な伝え方」ができているか、「迅速で的確な指揮」ができているか、「最悪の事態に先手先手で備えているか」といった点で及ばないところが多々あると思います。それはきっと直感的に誰しもが感じていることでしょう。技術的問題、対処法の洗い出しは専門家チームが行っているはずですが、高度な政治的判断をする必要が近々出てくる可能性もあります。その時に正しい「判断」と強いリーダーシップを発揮してくれことを期待します。政府の批判をすればきりがないですが、そのような記事は読み飽きていると思います。ここでは政府批判はせず、現状を理解することに重きを置きます。


2、 政府が「今何がおきているか」、「どのような対策をしているか」を知らせたくない理由は、以下の通りだと思います。(ここ数日でだいぶ具体的に話すようになってきましたが)

A 十分な原発/放射能リテラシーがないマスコミが過剰に報道する、誤報する。(例/原子炉溶融とかメルトダウンとは「何」で、また「起きたとして」「どの壁」「どの容器」の中で起きるのか、「容器の中に留めておけるのか」ということを十分に理解しないで、「溶融が始まった」とか「メルトダウンは不可避」と書かれると不要な混乱を招く。
Bマスコミに加え、地震の時のライフラインになったTwitter等で、一般の方の間違った見解が拡散する装置に変貌することもある。中期的に見れば、巨大SNSは「正しい」「事実認識」に収束する。しかし「不安」は「間違った事実認識だとしても」瞬間的に拡散し、間違いと認識されるまで、「正しい事実認識」を勝る勢いで信じられることがおきる。
B国民がその報道でパニック的状態に陥る可能性がある。
Cその結果不必要な買いだめ等で、生活必需品が足りなくなる。
D不必要な避難が列車等交通機関を麻痺させる。
E特に停電時に、集団的不安とストレスは強奪、レイプ等の局所的暴動を誘発する。
F経済活動、生産活動が状況を不安視し、大幅にアクティビティを下げてくると経済への影響は短期的には甚大である。

上記のような事態は大局的に見て、避けるべきです。中期的には報道の自由はありますが、いまの状況においての原発報道は、その報道が引き起こす混乱に責任がとれない限り、「政府発表」以上の「今おきていること」を「想像で伝える」ことが必ずしも正しいとは限らないのです。

F「今何がおきているか」、「どのような対策をしているか」をリアルタイムで発表すると「批判」「別案」で大騒ぎになるでしょう。「海水を注入しろ!」「電力を確保しろ!」「ヘリから水をまけ!」。そんなことはすべて考慮した上で、最善の策をとっているのです。しかし、現場でおきていることの判断は一秒でも遅ければ大惨事につながります。「批判」「別案」を聞いている時間もありませんし、「反論」する時間もありません。
専門家が正しいと、最善と信じる案を、順番にこなしていくしかないのです。そして、その順番も、方法も、長い間検討されてきたマニュアルと、現場でのみできる臨機応変な対応でのみ決定されるべきなのです。

以上の理由で、政府から「今何がおきているか」、「どのような対策をしているか」をリアルタイムで正確にしることはできません。また、「政府が知らないこと」が起きているかもしれません。そして私たちが「知ったからできる」ことがあるわけでもないのです。



3、 一方で、政府は情報を「意図的に遅らせること」はします。
でも「ねつ造」することや「過小」に伝えることはないと信じていいでしょう。
事実を長期的に隠すことは絶対にできないからです。放射能は誰にでも(装置があれば)測定できます。原発で何が起きたのかも関与者が多過ぎて事実を隠すことはできないはずです。



4、 したがって、「政府を信じられない」(いまの政権ではそういう気分にもなりますが)という理由で、東京を脱出したり、家から一歩もでないとか、パニックになる必要は(東京では、あるいは東京以西では)現時点ではありません。



5、 福島原発の事故深刻度のレベルは5と(国際的に)されています。(いまのところです)レベル5と認定された米国スリーマイル原発事故でも16Km圏の妊婦と子供が避難勧告を受けましたが、その影響範囲が事故後それ以上拡大されることはありませんでした。現在の20Kmの避難範囲は十分な余裕を持っていると思います。

米国が80Km圏内も退避指示をだしましたが、これは「米国はなにかを知っているから」ではありません。まず「米国は日本政府以上に知らない」から、念のため広めに避難させているとも考えられます。それ以上に、「外国での災害」において外国人が早めに避難するのはごく普通のことだということを考慮する必要があります。日本語ができない外国人が病院に行ったり、正確な情報を得たり、避難所に行ったりすることは困難です。
外国でクーデーターや災害があったとき、真っ先に邦人を引き上げる勧告を出すのは、他ならぬ日本です。外国で今回の災害が起きたら、日本政府は80Kmどころか、渡航自粛、邦人の帰国を決定することでしょう。
米国の80kmに怯える必要はありません。



6、 放射能の強さは距離の二乗に反比例します。つまり、避難範囲となっている20Kmの2倍の距離の40Km地点では1/4に、4倍の距離の80Km地点では1/16に、8倍の距離の160Km地点では1/64に、16倍の距離の320Km地点では1/256になります。東京までの距離は300Km近くあります。

避難区域とされている20Km地点で、放射能が人体に与える影響がある数値の200倍まで上昇したとしても、東京は健康被害に心配がないということです。(東京では200倍の1/256ですから、人体に影響のある量の0.7くらいになってしまいますね。放射能については後で詳しく話します)



7、 今回の原発事故の「事実認識」でもっとも大事であり、かつ誤解されている方が多くいるように感じることがあります。それは地震直後に自動停止プロセスが確実に稼働して、「ウランの核分裂連鎖反応は停止した」という重大な事実です。間違いなく「原子炉は停止」しているのです。そうでなければ45時間程度で炉心溶融が起きて、止められなくなっています。
つまり、いわゆる「メルトダウン」を地震直後に起こしているのであれば、日曜にはすでに大惨事になっているが、なっていないということは、「原子炉は停止」しているということです。この点を疑う余地は科学的にまったくありません。「ウランが燃えている」「核燃料は溶融し続けて放射能をまき散らしている」という誤った理解があるようです。そうではありません。「ウランの核反応は止まっている」ということをまず理解しましょう。

建屋が水素爆発(水素の爆発とは水爆とは何の関係もないものです。念のため)したことも、重大な問題ではありません。(想定できる爆発です)放射能を防ぐ上で建屋には何の力もありません。原子炉の「本当の壁」(格納容器)は建屋の内側に3重になって存在しています。(いまももちろん存在しています)



8、 では、「何がおきて」「何をしているのか」。
「ウランの核分裂連鎖反応は停止した」つまり「原子炉は停止」しているが、停止後もしばらく続く、「残留熱」を「水で冷やす」ことをひたすら行っているのです。4号機は地震前から停止していました。そして燃料棒はプールで冷やされていました。燃料棒は「ウランの核分裂連鎖反応を停止」してからも熱を発し続けるからです。その熱は徐々に下がっていき、やがて安全に移動、処理されます。

少しややこしいですが、原子炉の稼働中に(ウランの連鎖反応中に)放射性セシウムとヨウ素といった放射性物質が「副産物」として生成されます。ウランに比べると「力」も「消滅するまでの時間」も短い物質です。これらの「副産物」は原子炉停止後も熱を発します。(ウランの核分裂にくらべれば遥かに小さな熱しか発生しませんが)この「副産物」が時間とともに自然に崩壊する(放射性物質でなくなる過程を崩壊といいます)ときに熱を発するのです。この発生する熱は時間とともに急速に減っていきます。
冷却するいい手だてを見つけられれば、冷却することに必要な水の量は毎日減っていくことになります。

この熱を水で冷やし続ければ、原子炉は炉心溶融することはありません。あるいは部分的に炉心溶融しても、3重の壁を突き破る前に冷やすことができれば、大きな問題をおこしません。そして冷やすことができなかったとしても、炉心溶融した燃料が第三の格納容器内に留まれば甚大な被害にはなりません。最新の情報によれば原子炉の一部で溶融が起きている可能性があります。しかし第三の格納容器を出ない限り、外界に大きな影響を与えないのです。

最終防衛ラインである第三の壁/格納容器は炉心溶融した燃料を受けとめ、外界に漏らさないように設計されています。「炉心溶融が起きたときに、それを止められるように最初から設計されている」のです。現時点で、第三の壁が破壊されたという情報は一切ありません。



9、 しかし、「残留熱」を冷やすには「水」と「水」をくみ上げるポンプ、そしてポンプを動かす「電力」が必要です。
水は通常「純水」(蒸留水のような不純物のないもの)を使います。そうでないと原子炉が錆びる、汚れがたまるからです。地震後(正確には津波後)問題なのは、十分な量の「純水」を確保できなくなったことと、「電力」を失ったことにつきます。

しかし、既に「海水」が投入されています。海水を使うと二度とその原子炉は使えないものになります。政府と東京電力は再稼働を完全に捨てて、「海水」投入を始めました。つまり水は無限にあるということです。

問題は電力です。地震直後に原子炉が停止した後、しばらくは緊急用ディーゼル発電でしのげました。いわゆる想定内の対応です。しかし津波でディーゼル発電機が損傷し発電できなくなりました。
つづいて非常用バッテリー(電池)を8時間程度動かしたはずです。バッテリーだからなくなったらそこまでです。

今日も、そして明日も続く活動とは、電気を何らかの方法で確保し、ポンプを動かし、海水で原子炉を冷やし続けることです。あるいは、ヘリで上空から水を投入する、放水車で水を流し込むという人海戦術です。16日の時点では、ヘリは上空の放射線量が大きく作業を断念しましたが、17日には成功しました。17日より特殊給水車が稼働する予定です。

一号機から六号機までどれも余談を許さない状況ですが。いますぐ危機的ということではありません。(以下17日時点)
現在1号機はほぼ冷却が順調に進んでいます。
「どのように進んでいるのか」「具体的に何で水を注入しているのか」は私には分かりません。重要なのは温度上昇が止まっているということです。
3号機には追加措置が必要なようです。事実18日に大規模な給水が行われる予定です。危機的状況には現在はないと思われます。
2号機は、建屋が吹き飛んでいないのですが、圧力抑制室に損傷があり、なんらかの対応が必要です。建屋が吹き飛んでいないので、外部から一番冷やしにくいのが2号機です。電力が確保されたなら、まず2号機からポンプ稼働を試みるでしょう。
4号機は地震前から停止し、使用済み燃料をプールに浸していただけですが、火災が起きました。これは、既に説明した「停止後」の「副産物の発生する熱」によるものです。水の供給さえできれば1、2、3号機より安全なのですが、「建屋が爆発で飛ばされていない」ため、逆に水を注入することが困難になっています。火事でできた「大きめな穴」から水を注入する予定です。
また、5号機、6号機が現在のところ問題になっていませんが、問題が起きる可能性があります。

とにかく、電気と放水車が揃うことが大事なのです。
電気については、一号機、二号機の製造元である米国のGEが移動式ガスタービン発電機10基を空輸することを決めました。しかし、それが届き稼働するより前に、東北電力の送電線から福島原発に電気を引き込む作業がなんらかの成果を上げるでしょう。19日には大きな進捗があることが期待されます。(これがうまくいくと、状況は劇的に改善します。ポンプが壊れていなければですが)また、米軍横田基地から特殊放水車が現地に向かいで稼働する予定もあるようです。自衛隊の給水車も稼働するようです。
1作業あたりの被曝量の関係と水を1回に運べる量の関係から、これらは長くは続けられませんが、効果をあげていることは事実です。東北電力の電力がつながりポンプ/緊急冷却装置が稼働すれば、継続的冷却ができるようになります。

これらの努力により、炉心溶融を防げれば、甚大な被害は起きません。そして非常に重要なポイントですが、冷却作業が不十分に終わって「炉心溶融が起きたとしても」、「第三の格納容器内に留まれば」、やはり甚大な被害は起こりません。この点は、後ほど説明します。



10、現在検出される放射線とは何か。東京にどういう影響があるのか。

では、なぜ、いま放射能が漏れているのか、それはどのくらい深刻なのか(深刻ではないのか)を理解する必要があります。

前にも説明したように、現在原子炉は停止しています。ウランの核分裂は起きていません。しかし副産物が熱を出しています。水で冷やすので、水蒸気で容器内の圧力が上がります。この圧力を逃がさないと(建屋ではなく)格納容器が爆発してしまいます。これは絶対に避けなければなりません。そこで、この蒸気を逃がします。(圧力鍋を想像してください。一定以上に圧力が上がると圧力弁が空き、プーと水蒸気が放出されますよね)

この水蒸気と一緒に放出される放射性物質のほとんどは、キセノン137(名前はちんぷんかんぷんでしょうが、怖い物質ではありません)などの希ガスと呼ばれる物資です。キセノン137が放射線を出す能力は「数分で半減」してしまい、離れていれば「怖くない放射性物質」です。風で運ばれてくるとしても、数分では東京に到達しません。

避難地域で被曝した方から検出されていると想定される、ヨウ素131の半減期は8日程度です。ヨウ素に触れたとしても、8日で半減します。実際には、入浴を一週間しない人は(あまり)いないので、もっと前に洗い流されます。

福島で「被曝した」として、現時点で最も悪い数値の例を2つ見てみます。

いまのところ、最も強い被曝をしたとして報道されている方(双葉避難所で避難住民の靴から測定された値)は、(いろいろめんどくさい計算を全部省いて結論だけにすると)吸収線量率が0.53mGy/hと想定されています。(放射線医学総合研究所)
皮膚障害は2~3Gy以上で起きます。0.53m Gy/hではまったく問題がありません。8日間付着していても0.1Gyにしかならないからです(0.53X24時間X8日X1/1000=0.102)


福島原発の正門では、3月12日最大で1015マイクロシーベルトが観測されています。この場所に1時間ぼーと立っていたとしても、そのことで受ける放射線の量は、約1ミリシーベルトです。普通に暮らしていても、日本では年間2.4ミリシーベルト、標高の高いところに住んでいる方は10ミリシーベルトを被曝しています。胃のX線集団検診では、なんと1回当たり4ミリシーベルトを被曝しています。パイロットやCAは年間で2~3ミリシーベルトを余分に被曝しています。「被曝」は毎日普通に暮らしていてもしているのです。最悪期の正門で1時間被曝したとして計算される1ミリシーベルトが、いかに「過剰におびえる必要がない」数値かということがわかると思います。

まして、放射能の威力は距離の2乗に反比例します。そして、放出される物資の半減期は数分から、8日程度のものが多いのです。

また東京の、千葉の放射能が「通常時の数倍」になった(瞬間があった)という報道に怯えている方がいます。5倍になったとして、標高の高いところに住んでいる方と同じです。しかも彼らは1年中5倍の被曝をしているのです。数時間とか数日、放射線の量が5倍になっても、まったく問題はありません。それを気にするならX線もCTスキャンも受けられませんね。
東京の放射能の上昇はCTスキャンで受ける量に比べれば、あるいは飛行機でニューヨークに飛び、被曝する量にくらべれば軽微なものです。

東京において「放射能におびえる」必要は現在まったくありません。
外出を控えるとか、外出時にマスクをするとか、窓を開けない、エアコンを使わないといった行動はまったく必要がありません。(節電に役立つのでエアコンは控えめでいいですが)

同様に雨が降ったら濡れては危険ということも、現時点では、まったくもってありえません。(寒いから濡れない方がいいですが)
原爆と違って死の灰は放出されないのです。
チュルノブイリ原発とも根本的に設計が違い、最悪の事態になってもチュルノブイリのような甚大な被害にはなりません。

また、原子炉は「絶対に」原爆にはなりません。広島級の被害を与えるという俗説がありますが、天地がひっくり返ってもありえません。原子炉があれば原爆になってくれるならイランや北朝鮮は苦労しません。この二つはまったく異なるものです。

メルトダウンという言葉の意味が「曖昧に」使われていることが、怖さを助長していると思います。そもそもメルトダウンという言葉は科学的な専門用語として使われていません。「炉心溶融」した結果、溶融した核燃料が格納容器を「溶かし」格納容器の外界に露出して、甚大な放射能被害を出すことをイメージして「メルトダウン」という言葉は使われているように思います。もし、そのような事態がメルトダウンと呼ばれるとすると、大惨事と呼ばれた米国スリーマイル原発の事故ですら、メルトダウンしていません。炉心溶融がコントロールできなくなり、第1、第2の格納容器を溶かし、そして第3の格納容器の底で停止し、安定したのがスリーマイル原発事故で起きたことです。
この事故すら、16Km圏に避難勧告がでたものの、環境への影響はほとんどなく、1人の被曝による死者も出していません。
「チャイナシンドローム」という映画が公開された12日後にスリーマイル原発事故が起こりました。映画の中では米国の原発がメルトダウンしたら、その核燃料が格納容器を溶かし、地面を溶かし、地球の反対の中国までつきぬけてしまうという話が語られていました。恐らく、この映画の影響もあり、「メルトダウン」という言葉が過剰な、そして誤ったイメージで定着しているのでしょう。

炉心溶融が起きたとしても、それが冷却できなかったとしても、第三の格納容器の底で止まるように、米国や日本の原発はできているのです。

最後に「最悪の事態」の話をします。起きる確率が低い事態です。
しかしゼロではありません。なにが起こるか「解らない」ことが一番「不安」だと思います。なので、あえて「最悪の事態」を解りましょう。

「最悪の事態」
東京電力、消防、警察、自衛隊、米軍、GEの発電機の空輸、東北電力からの給電のすべてをもってしても、冷却活動が不十分に終わると、1号機から六号機までのどれか、またはいくつかの「炉心溶融」を止められなくなります。
そうなると、第一の格納容器が溶け、第二の格納容器が溶け、第三の格納容器の底に溶融した核燃料が落ちていきます。第三の格納容器の底はこのような事態を想定して、これを吸収、拡散して、固定するようにできています。この第三の容器の底に拡散して固定化される状態は、スリーマイルと同じ結果です。もちろんこの状態になってしまった原発の後処理は長い時間と莫大な費用を必要とします。
でも、ここで思い出してもらいたいのが、そのスリーマイルでも第三の格納容器内に留まり、外界に燃料が露出しなかったのです。結果として重大な放射能被害はありませんでした。

つまり、「最悪の事態」が起こったとしても、周辺地域に与える放射能被害は軽微であり、ましてや東京に何かしらの被害がある可能性はないのです。



以上としたいところですが、可能性が非常に低い「究極の最悪の事態」に触れます。



炉心溶融した燃料が第三の格納容器の底で止まらず、つまり第三の格納容器が破損して亀裂等が入った場合、炉心溶融した燃料や、放射性物質が格納容器外に露出して、放射能漏れが甚大になるというのが究極の最悪の事態です。周辺地域には甚大な影響を与えるでしょう。どのくらい甚大かは漏れる量によります。
この場合に限って、人体のみならず、周辺の農作物、海産物も中長期的影響を受けるでしょう。(いまは福島周辺の農作物に「健康被害を起こすほどの」影響はないということでもあります。キャベツを一度に100個も食べるなら別ですが。風評被害で福島の農産海産産業が壊滅しないように、私たちは理解する必要があります)

しかし、この「究極の最悪の事態」になったとしても、その放射能は東京まで(健康に被害を与えるほど)ただちには届きません。
風や、雨が放射性物質を運んでくる可能性は多少あるでしょう。しかし、そういう事態になったら、報道で解ります。いまや世界の政府、メディアが注目し、IAEAも協力、米軍も協力しています。Google Earthも定期的に宇宙から撮影して情報提供しています。その事態が起きたら、それから行動すればいいのです。

そして行動といっても東京から避難する必要はありません。政府発表や報道に従い、雨を避ける、外出を控えるといった程度のことですむはずです。



「究極の最悪の事態」まで理解したことで、「現在の状況」がいかに「東京で不安に生活する必要がない」が実感できたと思います。「最悪の事態」までならまったく不安がないのです。



結論です。無用な心配や、買いだめ、不安を助長するようなメールを送ったりするのを止め、毎日を前向きに生きましょう。そして福島で、まさに命を賭けて冷却に取り組んでいる方々に感謝しつつ、落ち着いて事態の推移を見守りましょう。わたしたちにできることはそれだけです。
世界に誇る日本の技術と命がけの努力で、きっと最悪の事態は避けられると私は信じています。



高松 聡
3月17日 23時20分

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