2011年4月23日土曜日

君たちは将来の子どもたちをも棄民している

サッカー欧州CLの取材で4月4日に日本を発ち、ミラノ(イタリア)、デュッセルドルフ(ドイツ)、ユトレヒト(オランダ)、マンチェスター(イギリス)などを回り、ベルリン(ドイツ)に来てから1週間が過ぎた。到着時は肌寒かったベルリンも、日に日に気温は上昇し、夏の到来を感じさせている。

 さて、日本ではいまだ東日本大震災の余震が続き、福島第一原発の安定化に向けた作業もスムーズにいっていないと聞く。

 もちろん、こちらヨーロッパでも連日大なり小なりテレビ・新聞等で日本の動向は報じられている。しかし、そこには出発前に日本で見聞きしていた情報と若干のズレがあるのは素人目にも明らかだ。
 

 被災地の悲惨な状況や原発周辺のリアルな映像(防護服を着た作業員の活動状況や爆発後の建屋内の様子など)は、日本では目にしていなかった形で流れている。

 そして、震災から1カ月が経過した現在では、復興に向けた動きというよりも圧倒的に報道量が多いのは原発問題。「FUKUSHIMA」という文字が、そこかしこで見受けられる。

 事故レベルがチェルノブイリ原発(1986年)と同様の「レベル7」に上がった今、さまざまな比較がなされていることと思うが、イタリアの知人によれば「イタリアには事故後、チェルノブイリから流れてきた移民が海外駐在員の家で家政婦などをしていることが多いが、割と若いのに(30~40代)がんで亡くなっている人が多い」という。因果関係は不明だが、幼少期に両親ともども避難してきた世代ががんを発症していると考えてもおかしくない。

 ドイツでは、最近チェルノブイリに撮影に行ったというカメラマンに会ったが、現在でも周囲30キロは隔離されており、廃炉となった原発には一般人は近づくことはできないという。

 ベルリンのホテルマンは「ドイツ人はヨーロッパのほかのどの国民よりも原子力に対して批判的なんだ。こちらでは日本政府が真実を伝えていないとの報道もあった。廃炉にするにしても、チェルノブイリよりも大変で、ずっと長くかかるらしいね。十分、気をつけて」。

 デンマークの友人からはこんなメールが来た。「デンマークのメディアはいま、この期に及んで原発頼みのエネルギー政策を変えようとしない日本政府の対応を、驚きを持って伝えています」と。

 そういえば、出国便のKLMオランダ航空は搭乗2日ほど前になって急に「成田ーアムステルダム」便が関西国際空港経由になったと連絡してきた。震災の影響で、成田では食事や水などの物資の確保が難しいとの理由だったが、乗務員自体も全員関空で交代。つまりは、オランダ人スタッフも成田滞在を避けたかったようだ。

 果たして、実態はどうか。困難な時だからこそ、報道に惑わされず、確かな情報に基づいた判断と行動を個々がすべきなのかもしれない。
(文=栗原正夫)

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