2011年6月27日月曜日

武田先生です

ラドン温泉の効用

福島第一原発から漏れた放射線はほぼ100京ベクレル程度になり、原発事故としては驚くべき結果になりました。

不幸中の幸いですが、福島原発は太平洋岸にあり、事故直後から西風が多かったので、100京ベクレルの内、大半は太平洋に流れました。

その分だけ「太平洋」という世界の人たちが共通して利用する海(公海)を汚したのですから、日本人としては深く反省しなければなりませんが、それでも日本の被害が少なかったことにホッと胸をなで下ろします.

これまで日本人は「原爆の被害者」でしたから、「被曝の被害者」でもありました。でも、今回の福島原発の事故によって「被曝の加害者」になったことも同時によく考えた方が良いと思います.

つまり、今回の東電の事故は、単に東電という私企業が負担できるような影響ではなく、日本の歴史にも残る世界的な負の行為になったのです。

大きな声で「太平洋に行って良かった」とは言いにくいのです.

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それはともかく、100京ベクレルの内、少し内輪に見て、10分の1の10京ベクレルの放射性物質が日本国土に落ちたとすると、日本人1億人で一人あたり10億ベクレルを背負い込んだことになります。

食品や水の規制値が、おおよそ10ベクレルとか100ベクレルという単位であることでもわかるように、人間が一日に処理できる放射線量は約100ベクレル程度とすることが出来ます.

ということは、10億ベクレルを100ベクレルで割りますから、1000万日で処理をしなければなりません。

ところが、人間の寿命は80年で、その日数は80×365ですから、約3万日です。つまり、今回の事故は一人の人間が、一生かかって処理できる放射線量の300倍にもなっているということを示しています.

福島近辺にお住みの方を含めて、日本人全体で被曝の被害を防いで行くことが必要だと私が言っているのはこのことです。

もっとも良い方法は「除染」ですが、なにしろ日本にはシッカリした政府がありませんし、それを期待していては自分や子供の健康を守ることが出来ないので、まずは自分の対策から始めたいと思います.

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放射線をあびる「ラドン温泉」というものの効用は、被曝から見てどのように考えれば良いでしょうか?

普段、私たちは低い自然放射線の中で過ごしています.

でも、その低い放射線でも、また食品などに含まれている発がん物質などからも、攻撃を受け、常に発がんの危険性があります。

体内にできるガンに対して、人間(動物も含む)は常に初期の段階でガンを監視し、それを取り除く「防御」をしています。たとえばTNFというガン壊死因子などがそれに当たりますが、血中に緑色をした複雑な化合物があり、それがガンを退治します.

かつて私は若い頃、このTNFの研究をしたことがあるのですが、実験用の動物をガンにかけると、血中のTNFが増え、それを分離して研究をしたものです。

ガンにかかっていない動物の場合は、血液中のTNFの量が少ないので、実験に使うことが出来ません。

そこで、可哀想なのですが、まず動物をガンにかけて、それから血液中に増えたTNFを採取するということです。

これは単なる一例ですが、人間を含む動物は危険に対して、それを防ぐ方法を身につけています.

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つまり、ラドン温泉の効用は、

1) 普段、低い放射線を受けていて、少しのガンが体にできる、
2) それを除くために少ない「ガン退治化合物」が体内に出来ている、
3) でも、日常生活を送っている時には、体内の「ガン退治化合物」はそれほど多くない、
4) そこで、時々、放射線の高いラドン温泉とかラジウム温泉に行く、
5) そうすると、そこで放射線をあびるので、体がビックリして「ガン退治化合物」を急に作って体を守ろうとす    る、
6) ラドン温泉に2,3日浸かり、体を騙してガン退治化合物を増やし、それから日常の生活に戻る、
7) 日常の生活ではあまりガンが出来ないので、余ったガン退治化合物が体の中のガンをすっかり退治してく   れる、

と言う仕組みと考えられます.

このような考え方は、運動でも、健康法にも多く見られます.つまり、普段の生活でかかる負荷よりも少し強い負荷をかけて、体の準備をして、それから普段の生活に戻ると、楽に生活できるということと同じです.

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3月下旬以来、福島、関東に住んでいる多くの人たちや子供達は、不意に放射線をあびることになりました。体はそれが「ラドン温泉」なのか、「福島原発」なのかは判りませんから、とにかく体内では今、必死に対抗策を講じているところでしょう。

でも、なかなか放射線も強敵なので、ずっと高い被曝を続けているとそのうち打ち漏らすガンが出てくるかも知れません。

そこで、夏休みなどを利用して、「放射線の低い場所」で何日かのんびり過ごすと、体内には「ガン退治化合物」が多くなっているので、それがこれまでに体内にできた被曝のキズを退治してくれるでしょう。

夏休みは体が頑張って増やしてくれた「被曝のキズを治す力」をフルに利用して、これまでのキズを治すチャンスと思います.

ちなみに、これまでの放射線防護の考え方では、大人が5年が一つの限度ですから、子供は1年半ぐらいが目処になります。

今年の夏休み、お正月、来年の春休みなどのチャンスをとらえて、自分で治す力を利用することが大切です。

(平成23年6月27日 午前10時 執筆)

武田邦彦

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