2011年6月29日水曜日

東電株主総会(田中龍作さんの記事から)





東京にしては緑が豊かな港区芝。街路樹にまだ朝露が残る午前9時、東電株主総会の会場となっている東京プリンスタワー周辺はものものしい雰囲気に包まれた。警官隊がビッシリと配備され、黒のスーツに身を固めた東電社員がピリピリと動き回っている。これが関西であれば暴力団の総会かと思い込むだろう。

 チェルノブイリを凌駕する環境汚染となることが確実の福島第一原発事故を受けた株主総会に世の注目が集まった。株主たちは気が気でない。老後の蓄えに東電株を買った年金生活者や原発に反対する株主たちが続々と会場に足を運んだ。

 東京電力によれば出席した株主は9,258人(午後3時現在)。例年の3倍にも及ぶ。株主たちは今回の事故をどのように受け止めているのか、話を聞いた――

 「原発を諦めて頂かないと(被災者と株主は)浮かばれない。再生可能エネルギーに力を入れてもらいたい」。(会社員・50代=横浜市・女性)

 「本当に立ち直りたいのだったら真実を明らかにすること。それで東電が潰れても仕方がない。たぶん真実は明らかにされないだろうけど」。「情報開示されないとまた事故は起きますね?」と筆者は尋ねた。「そうだね。また起きるね」(年金生活者・70代=川崎市・男性)。この男性は20年間以上東電の株を持ってきた。

 「国の政策に従ってやってきたのだから東電に怒りはない。今回を教訓に事故が起きないようにしてほしい。原発はひとたび事故が起きると大変なことになる。安全対策に投資してもらいたい」(年金生活者・60代=男性)

 東電に好意的な株主でさえ情報開示と安全対策の徹底を求めているのであった。

 【リスク考えない経営責任を問う】
 
 これほどまでにいい加減な企業なのか。株主総会は東電本店で行われる記者会見を見ているようだった。フリー記者に相当するのが原発に反対する提案株主だ。株主からの質問に答える勝俣恒久会長はじめとする役員たちはノラリクラリとかわし、真っ向から答えようとしない。

 一例を挙げると次のような具合だ。
株主「データ隠しが幾度も明らかになった。小児ガン、甲状腺ガンが確実に出てくると思うがどうするのか?」

小森常務「事故当初、電源がなくデータが取りにくかった。膨大な情報でまとめられなかった。健康被害防止に努めてまいる所存です」。

 こんな子ども騙しの答えで株主が納得すると思っているのだろうか。納得しなくても数の力で乗り切れるとタカをくくっているのだろう。外形上、法律の手続きを踏んでいるに過ぎない。

 上記のようなやりとりが6時間も続いたのである。たまりかねたのが紀藤正樹弁護士だ。紀藤氏は東電の原発事業に危ういものを感じ20年間、東電の株を所持してきた。紀藤弁護士は次のように力を込めた。

 「たった一回の事故で東電という会社は破綻した。あなた方はリスクを考えない経営形態を取ってきた。私は将来の経営責任、そして過去の経営責任も問おうと思っている」。

 東電経営陣は口先では「皆様には大変なご迷惑をおかけしまして…」と言う。だが事故原因をひたすら津波のせいにする。今回の大事故の予兆となるトラブルや事故を隠し続けてきたことへの反省は微塵もない。会社を支えている株主にさえ情報開示をする姿勢がないことも今日の総会で明らかになった。

 一縷の望みも空しく402人の株主が提案した「原子力発電事業からの撤退」は反対多数で否決された。

 東電の体質は旧態依然のままである。住民や作業員への対応を見る限り安全対策は相変わらずお粗末だ。「また事故が起きるね」。前出の株主の言葉が重くのしかかる。

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