2010年12月31日金曜日

そして「武士道エイティーン」へ

この作品は、前二作とは少々趣が異なる。
もはや青春小説から逸脱しかかっている。
ところどころ「ジウ」のうような雰囲気も持たせる。
まあ、同じ作者だからねえ…
それに、青春小説というジャンルに縛られるのが誉田さんもきつかったのだろう。

武士道シリーズ前二作は一人称二視点で書かれている。
つまり、磯山と早苗という主人公二人の視点で書かれている。
で、この視点の特徴的な面白さがあって、それが会話直後のセンテンスなのだけど…、まあ読んでみたらいい。
なるほどこうすれば若い女子高生の感じがよく出ること出ること。

で、本作は一人称六視点という構成になっている。
磯山と早苗以外に四人の視点が導入されているわけだ。
この構成によって前二作の枠組みをこの作品は壊している。
壊してはいるが、肝心な部分はしっかりと残していて、その壊れかかっていながら残っている感じが本作品の持つ青春小説の終わりの雰囲気へとつながっていく。
達者な人だし、温かな目を持った作者だと思う。

今回は六人が六様に自分の見た人生を思うさまで謎解きの雰囲気も演出されており、人がそれぞれ生きながらどのように他者とつながっているのかということを教えたりもしていて、最も読み応えのある作品になっているといっていいかもしれない。
けれども、だから本作品こそがこのシリーズで一番いいかというとそうでもなく、前二作のもっていた剣道への、相手への、求心力は削がれている。
それが人の成長(この場合「人」とは登場人物のことですよ)というものだと訳知り顔で語ってもいいのだが、実はわたしはそうは思っていない。

作品への評価はともかく、この作品もいいものだと思います。

で、わたしが前二作と本作品を読み比べながら考えたこと、それは小説そのものとは少し離れますが、そのことを次のブログに書いてみようと思います。

「ベクトルとしてのあなたへ」

そんなタイトルでしょうか。
機会があったら読んでみてください。

今年も一時中断しかけたこのブログを長く読んでいただきありがとうございました。
わたしにはこのブログの読者に支えられて生きているところがあります。

本当にありがとうございました。

今夜中に次のもう一本を書くかもしれませんが、いまはとにかくよいお年をお迎えくださいとメッセージをお送りします。

あなたの幸せを心より願っております。

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