2011年8月12日金曜日

当事者は一様ではない

当たり前のことだが、当事者であるということとすべてを知りうることは切り離されている。

原爆の被災者だからといって原爆の影響がいかほどかを知っていることはない。
被災者のなかに原爆に対するいろいろな思いが渦巻いている、そんなところに被災者の当事者としての特徴はある。
したがって彼らは原爆の起こした悲惨な状況を目の当たりにしているだろうが、原爆の起こした人体への影響をそれほど詳細には知らない。

たとえば、以下が原爆症認定の政府見解だが、

被爆者は、原子爆弾による放射線が原因となって起こった病気やけがについて、医療をうける必要があるときは、全額国の負担で医療の給付がうけられますが、そのためには、その病気やけがが、原子爆弾の傷害作用によるものであり、現に治療を要する状態にあるという厚生労働大臣の認定(病気やけがが放射線以外の傷害作用によるものである場合には、その人の治ゆ能力が放射線の影響をうけているということについての認定)をうけなければなりません。

放射線の影響を要件に入れている。

日本は広島、長崎に続いて福島で三回目の被爆を受けたと安直に述べている人々がいるが、それはりんごとスイカとかぼちゃを並べて一個、二個、三個と数えているようなもので、同じものではないことを知らない。

今回の福島でこれから大きく問題になるのは内部被爆、低線量被爆の問題(直接放射線を浴びたものとはまったく異なる)だがこの影響に関する日本自身の資料をほとんど持っていない。
前述の原爆症にもはじかれる放射能汚染の影響だ。

このことに関しては広島長崎の原爆を落としたアメリカのほうがよほど詳しい。
なぜなら、あの二発の原爆は観察資料の役目もしていたからである。
そのために広島は原爆前に爆撃を受けなかったし、その市の中心部に向かって原爆を落とされた。
原爆の攻撃力調査のためである。

その落とした当事者は原爆の内部被爆の問題は公にしたくなかった。
その影響を世界に知らしめれば、原爆使用の非人間性が明らかになるからである。
けれども世に知らしめずにABCCによりアメリカは調査を続けているから原爆のもうひとつの当事者アメリカは日本よりも内部被爆についての詳しい資料を持っていると思われる。

というわけで、日本は世界優一の被爆国ではあるけれども、放射能の被害状況については実験としてみなしているアメリカにその情報は劣る。
いわば、福島は日本が始めて自由に調査できる被爆なのである。
そこで、今回の福島事故で自由に被災者のために情報が公開され続けているかといえば、そうではなく、原子力発電のもつ悪魔的破壊力を押し隠すためにあまり報道はされないでいる。
(福島第一原発は広島に落とされた原爆4000発分のセシウムを抱えている)

それでも今回の事故でわかったことは少しずつもれ出ていて内部被爆と低線量被爆の問題が次第に大きく取り上げられようとしている。
この二つは晩発性のもので発症するまでに随分と時間がかかる。
したがって、国や東電が知らぬふりをしようと思えばいくらでもできる。
だから、あやつらは平気で給食に内部被爆用の食べものを混ぜようとしたりする。

日本ははじめて福島原発事故で、その情報すべてを手にできる位置で被爆の当事者となった。
先の広島長崎では単なる実験材料に過ぎなかった。

当事者とは言っても先のものとは天と地の差がある。
それが他国への原子力発電の技術輸出をこそこそと画策する所以になっているのであろう。

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