2010年12月11日土曜日

果断(隠蔽捜査2)



今野敏の「果断」を読む。
愉快な本だが、わたしにとっては若干の痛みと哀しみにも触れてくる。
この本のもっとも大きなポイントは竜崎伸也という主人公の造形であって、作者も自分の描き出した竜崎にそぐわぬストーリーを展開することに終始心を砕いている。
それほど竜崎はかたくなまでに自分の心に忠実に生きようとする人間であり、その心がまったくもって冷徹なところにこの作品の眼目はある。
今野氏の隠蔽捜査シリーズはすでに三冊出ているが、最初の二冊が大きな評判を取った。
三冊目は?
読めば読んだだけの価値はある。
小説の登場人物たちがすでに駄作を産めないように監視し始めているからだ。
なんにしろ誰も竜崎のようなキャラクターの存在があることに気づかなかったことに微苦笑させられる。
なるほどこのような人物が組織に紛れ込んでいたら、そしてある程度の出世もし、力ももっているとしたら組織に胡坐をかいていた連中は困ったことになるだろう。
そこが、痛快無比。
さらに、作者は幾つかの味付けをしているが、それは読まれてみればいいだろう。
もし、あなたがこのシリーズを読んでいないとしたら、楽しい年末になるかもしれない。
わたしはと言えば、十分に楽しくて、そしてなかば心痛かった。

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム