2010年5月29日土曜日

哀しいいウソ

もう一ヶ月も前だろうか。
わたしのかみさんが、会社を首になったと哀しい顔をしてわたしに言う。

「もう、あなたに頼るしかないの」

わりとよく聞くセリフだが、かみさんから聞いたのは初めてだ。
わたしのかみさんは圧倒的に強力でこの社会に順応している。
まあ、順応していると思い込んでいる。

その人が、社会から放擲されたとなると一大事だ。
けれども、このごろになって、それはウソでかみさんがまだ、会社に在籍していることを知る。

そうかと安心したが、その後襲ってきた感情はきびしかった。
とても詳しくは書けないが、わたしのようなろくでなしに甲斐性のあるあの人がどんな気持ちで頼ってみたかと思えば、哀しい。

ほかにも、今月の家賃が払えないと泣きついてきているひともいる。
こちらの方はしょっちゅうだからもういいだろう。
放っておけば、何とかしている。
あれはあれで、たくましい。

もっと心配なのは、自分を周りに合わせて自分を見失っていく幼い女の子だ。
まあ、幼いといってもそこそこの歳なのだから、これも捨て置いていいだろう。
最近、興ざめの気分だ。
だって、どうやっても同志にななれない軟弱ものなんだから。

で、かみさんはどうかといえば、こっちは強い。
強くてすぐさまシステムの側に入っていく。

わたしも敵に塩を送るのもどうかと思い、躊躇する。
それが、われわれ夫婦の行き違いを生む。

もう何度言っただろう。

「いい子だから、オレなんかと別れてしまえ」

格好をつけているわけではない。
獅子身中の虫を飼うのはきわめて危険なのである。

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