2010年6月6日日曜日

自己変革

自己変革を夢見ている少女を知っている。
自己変革を夢見てはいるが、やっていることは正反対なことばかりだ。
幼いから仕方がないと思っているが、幼いのは精神年齢のことだけで実年齢を考えれば暗澹とする。
大丈夫かい、ねえ、と聞いてはみるが、答えはいたって明るい。
要するに、明るくて可愛いバカなのである。

本人には聞く耳がないので直接話してもしかたないが、大事なことなので惜しいと思い、ここに記すことにした。

自己変革をしようと思っても何から変えていいかはわからない。
たぶん、自分の精神を変えなければならない。
そんなふうに思ったりするのだろう。

けれどもそれでは難しすぎる。
そういうところから変えようと思ってはならない。
まず形を変えるのだ。
形を変えれば、必ず内部も変わる。

それが多くの人が知らない秘密だ。

だからキミの場合は、髪形を変えなさい。
その髪型ではだめだ。
それからファッションを工夫しなさい。
そうすればかなり変わる。

さらに欲を言えば、昼休みの過ごし方を変えなさい。

生活も変えなさい。
週のうち半分は都心で過ごしなさい。
安いマンションを借りてしまえばいい。

外経絡を変えてしまえば、必ず内経絡も変わる。
東洋医学を学べば、キミにだって簡単にわかることだ。

それに何よりキミは飛びぬけての美人だ。
美人が美人であるように気高く振舞えばいい。
キミが美人であることを強調すれば、その美しさがキミを変えてくれる。
キミの美がキミを導いてくれる。
美人の特権だね。

しかる後にキミはキミの美しさを放棄すればいい。
ここまでできれば上等だが、一人では難しい。
で、わたしが必要というわけだ。

キミはわたしがボランティアか何かと思うかもしれないが、そうでもない。
わたしにも大きなメリットがある。

妙な話だからにわかに信じられないだろうが、キミの顔には傷がある。
その傷は上戸と同じ場所の同じ傷だ。
わたしはそれがいとおしいい。
なるべくその傷の近くにいたい。

そして、一度だけその傷に直に触りたい。
それがキミを美人に仕立て上げ、キミに自己変革を起こさせたときにわたしが得る報酬だ。
限りなく価値があり、限りなく変態だ。

けれども、そんなところに傷を持つ美人にはめったに出会えない。
わたしがキミに執着するゆえんだ。
そうでなければ、百年も前にキミを捨てていた。

妙な話だが、人が人を好きでいるのはそんな理由で十分なのだ。
あまり面倒な由は要らない。

つまり、好きだから好きなのである。

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