2008年7月6日日曜日

青いバラ


最相葉月に鈴木省三(日本のバラの育種家として有名。京成バラ園芸所長で「ミスターローズ」と呼ばれた)らを題材にしたノンフィクション『青いバラ』という名著があるが、 長い間、青いバラは世界中のバラ愛好家の夢とされていた。だから英語での「Blue Rose」は、「不可能」といった意味さえ含まれるほどであった。
詳しくは最相さんの本に譲るとして、単純な話、バラにはそもそも青の色素がないのである。
だから、厳密な意味での「青いバラ」は品種改良のみで作ることは不可能と判明することになる。

ところが、バイオテクノロジーの発展により、「青いバラ」の作出に「遺伝子組換え」などを使うバイオテクノロジーが取り組みだした。

そして長い14年という試行錯誤の後、「青いバラ」は、日本のサントリーフラワーズと、オーストラリアの植物工学企業であるカルジーンパシフィック社(現:フロリジン社)との共同研究開発により、世界で始めて創られた。(さらに書いておけば彼らの研究のポイントは二点あった。「青色遺伝子がバラに組み込めるか」「組み込まれた遺伝子が読まれて、青色のバラが咲くか」)

で、彼らのふたつのハードルは越えられ、青色色素を持ったバラが遺伝子組換え技術により誕生したのである。
そしてその事実は、2004年6月30日に発表され、サントリーは世界初の青いバラを2009年から市場販売すると発表した。

だが、この話、わたしには、どこか腑に落ちない。

それでも、「青いバラ」はまだこの世にはないと、わたしは思っていたい。
そんな思いが強い。

遠い山国に生きるわたしの大切な人がいる。
あるとき、その人とまったくそっくりな都会を闊歩する美しい女性を見かけたとする。
そのときわたしは、決してあの山国で生きるわたしの大切な人と彼女を同一人物とは考えないだろう。

なぜだろう。
しかし、一瞬もそんな発想が浮かばないことは、はっきりと確信出来る。

鈴木省三氏は、この「青いバラ」を見てどのように思うのだろう。

言語矛盾のようだが、「青いバラ」なら「青いバラ」なのだろうか?

わたしのこの胸のなかの違和感はどこから来るのだろう。

写真のように「青いバラ」は、このように美しいのに。

美しいだけではだめなのだろうか?
青いだけではだめなのだろうか?

そもそも彼らが夢見た「青いバラ」とは何ものだったのだろうか?

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