わたしは、何に動かされてしまったのだろうか?
尾篭な話で恐縮だが、ようやく下血がとまりそうだ。
少し安堵しながら、鏡の中のまっちろけな顔を見て、ぜいぜいしていたら(血液が尻からこの二日間常時流れていったものだから鏡の前まで歩くのに十分な酸素がまわらんのですよ。)どういうわけなのか、ふとあの評判になったミラノのポスターを思い出した。
ミラノコレクションでは、サイズ38 (日本の7号程度)以下のモデルは使わないようにと呼びかけているというが、今年のMiss Italia、シルヴィア・バッティスティ(18才・身長180cmでサイズ38)に審査員が肉付きが良すぎるとコメントしたのは有名な話だ。
写真はミラノコレクションの1週間のみ、イタリア主要都市に貼り出された「NO 拒食症」というアンチ「スリム至上主義」のキャンペーンポスターだ。
枯れ葉のようにやせ細った全裸の女性が写っているが、彼女はここ数年、深刻な拒食症に悩んでいるフランス人モデル、イザベル・カロ(Isabelle Caro)。
現在の体重は30kgちょっとだという。
撮影はオリヴィエロ・トスカーニ、イタリアでもっとも著名なカメラマンのひとりだ。
仕掛けたのは「Nolita」。
ミラノコレクションの次期は世界中からファンションジャーナリスト、バイヤー、VIPと集まってきていて、このあまりに衝撃的なポスターは、各メディアや公共機関を巻き込み、大きな話題と物議を提供した。
このポスターに対するミラノ市の取り扱いはさらに話題を呼んだが、そのことはニュースで追ってほしい。
今回の「NO拒食症」のメッセージは大きな問題提起になったと思う。
しかし、いくら「NO拒食症」と叫び続けても「スリム至上主義」のファッション業界が変わらない限り、やはりモデルを目指す娘たちは拒食症と一蓮托生なのだと思う。
選び取った人生ならば、それでいいとは思うが、誰かに操縦された選択であるかどうかの見きわめは難しい。
どこかやるせない話だ。
わたしの下血はかっとなった末の死をも恐れぬ蛮行によるものだが、さすがに出血量が増え、血圧が下がり続けすぐに息が上がるようになると救急車を呼ぶことを考える。
一時的な世迷いごとの判断は、拒食症まで行くだけの根性もない。
彼女たちはなにをどのように考えて、ああなるのだろうか。
それとももはや自分で何かを決めることさえも何かに捧げてしまったのだろうか。
自分が死から少し離れると、気が楽になってそんなことを鏡を見ながら思った。
現代はいろいろなものを闇雲に巻き込みながら猛烈な勢いで進んでいる。
こういうポスターを見るとぞっとしてしまうが、形こそ違え、わたしもこんな風になっているのかもしれない。
ラベル: 社会
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