身体を鍛えねば…
写真は正蔵の襲名披露のときの池袋演芸場だからもう2年以上も前になる。
あの男、うまくなっているのだろうか。
わたしにはわたしの見方があるが、それは私見にすぎない。(かなり自信があるが、それでも私見には違いない。)
人それぞれが、九代目林家正蔵を評価すればいい。
当たり前のことだが、それぞれの人の目に映る正蔵はそれぞれに違っている。
あなたの正蔵とわたしの正蔵が違うのは当たり前であって、その先に見巧者云々の話は来るが、これは特定の人間としか交わす気はない。
ややこしい話だからね。
さて、わたしは本日(1月19日)、予定通りに何とか12時半前には池袋演芸場に着いたのだが、すでに立ち見だという。
座席数が93席とはいえ、それはあまりに殺生な、と思いながら入るが、なるほどこの小さな場内、ぎゅうぎゅうに入っている。
まだ、開演前で、前座がやっているところだぜ。
寄席っていうのは、もっとがらがらなものではなかったのかい。
正月中席でも開演前なら座れたはずだが、「ちりとてちん」効果か何か知らないが、これはつらいことになりそうだ。
わたしは、この日、開演後二番目に登場する柳家三三(さんざ)を聴きに来ているから帰りようもない。
1974年7月4日生まれのこの青年は、芸名のごとくいま三十三歳である。
この三三の落語を、生で彼が三十三歳のうちに聞いておこうというのが今回のわたしの眼目でした。
小三治による純粋培養と言われたりする青年で、二つ目のころからその噂は鳴り響いておりました。
純粋培養とは、落研、天狗連などに染まらず、いきなり小三治から落語を教わったというほどの意味ですが、どうやって教わったかは知りません。
また、あの小三治が教えるとも思えないのですが、皮肉も込めてでしょうか純粋培養などという人も多いようです。
この日の三三の演目は「しの字ぎらい」。
なるほど達者でした。
達者でしかも線が細くない。
ここんところが肝心なところで、いくら達者でも線が細い噺家はそれより先にいけない。
これが、ここまでのところ、300年にいたる落語の歴史の事実です。
と、わたしが申しておるのです。(怪しいですかな?)
ですから、達者なあるいは器用と言いましょうか、そういう噺家は線をいかに太くしていくかが勝負となってきます。たとえば……なんていううまい人とかはね。
高座を終えて帰っていく姿にもすでにある種の風格をもっていた三三ですが、夜の部で「しの字ぎらい」と若干かぶる「かつぎ屋」を柳亭市馬がやったものだから困った。
市馬にやられるとその技量が別様に見えてくるところが落語の恐ろしいところで、その意味で落語は同じ話(ストーリー)でありながら、まったく違ったものとなるという恐ろしさがある。
それは、聞き込んだり、寄席に足を運んだり、物の本を読んだり、自分で考えたりしてはじめてなんとなくわかりだすことで……そんな苦労までしてやることかい? なんて思われるかもしれないが、ご自身もなにかの分野で表現に携わっておられるなら、これが大きな財産になる。
別に、楽しみたいだけなら、ただ楽しんでいさえすればいいので、それはそれでとても素敵なことではないですか。
問題は、ちょいかじりの専門家気取り。
曰く、「俺はクラシックには詳しい」
曰く、「俺はクルマには詳しい」
曰く、「俺はそばにはうるさい」
…………
ほんとうかい?
だいたいが、何かの世界に入っていったものはそういうことは言わないものだと思うんだが…
入っていったものは、入っていったことで自分の未熟さが次から次へと見えてくるもので、自信などが顔を出すのは、北欧の太陽の1000分の1くらいのものですから、自慢なんかするわけがない。
してからにして、ほんとうかい?
さて、落語談義はさておいて本日のいくつかの名演だけ記しておきたい。
さん喬「時そば」…わたしはこれほどの「時そば」を見たことはない。
小三治「野ざらし」…今日の小三治は乗っていた。わたしの見た小三治の中でも傑出したもののひとつだっ た。とはいうものの、この人のやるものはたいてい傑出している。
権太郎「代書屋」…明らかに枝雀を下敷きにしているが、越えているかも知れない出来だった。よくここまで 練ってきたと思う。枝雀が生きていたらこの「代書屋」にどう返したか。あるいは、枝雀 の「代書屋」を生で見たことがないわたしが、それを見たとき、枝雀恐るべしと思ったの だろうか。久しぶりに高座に枝雀を見た。枝雀よ永遠に。
ほかにもあげるべき高座は数々あれど、あまりにもご退屈でしょうから、このへんで。
かさねて、ご退屈さまでした。
どうも、あいすいません。
あ、それからさ、わたしは結局12時半から16時50分くらいまでの昼席を、つまり4時間以上の間を立ち通しだったのね、そしたら、あちこち痛くなって、昼席の後、空いた席に座ったら、あんまり楽で夜席の最後まで見てしまったのさ。
帰る際、はっきりわかったが、ふくらはぎが痛いのよ。
たった4時間程度立っているだけで、だって、そんな仕事、山ほどあるでしょう、4時間どころじゃなくてさ。
情けないね。
もっと、身体鍛えなきゃね、ご同輩。
ラベル: 演芸
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