2008年10月24日金曜日

ロス疑惑、一事不再理について


事件は日々流れていくので、三浦氏が自殺であったかどうかという流れをたどっても、この事件はもはや過ぎ去ったものである。

しかもこの問題のもっとも大きなポイントは、「一事不再理」であったことは忘れられて。

「一事不再理」とは、ある刑事事件の裁判について、確定した判決がある場合には、その事件について再度、実体審理をすることは許さないとする刑事訴訟法上の原則である。

この原則は対外的な問題までに進むと、はなはだ複雑な要素が入り込んでくるので単純には論じられない。
たとえば、北朝鮮で拉致犯罪者を無罪としたとき、日本は放っておいてもいいのかという問題はどうするのかと単純に思い浮かぶ。

ところで、米国兵の沖縄等での暴行事件についてはもちろん、日本政府は墜落したヘリコプターでさえ見逃している。

これは、
日本にいる米軍は、日米間で取り決めた安保条約にもとづく日米地位協定や日本でつくった各種の特別法令によって、広範囲の特権が与えられていることによる。

基地の自由使用もその一つだが、米軍は、基地を自由に使用でき、基地内の管理・運営などに必要なすべての措置をとれることになっている(地位協定三条)。
米軍は、日本政府が特権擁護の態度をとっていることもあって、日本の国民の生活や権利などを度外視して使用してき、工事による山林や河川の破壊、大気汚染、有害物質流出、低空飛行訓練や夜間離着陸訓練による大騒音…数限りなくある。
これらは環境基準、騒音基準その他の国内法令さえ無視するもので、その傍若無人の使用は、世界の中でも日本の米軍基地がきわだっているようだ。

さらに基地外の活動についても、米軍には、地位協定とともに特別措置法、特例法等の各種の法令で特権があたえられていて、空港・港湾使用料の免除をはじめ、その範囲は、鉄道・電話・電力・港湾・空港・道路・物品調達など多岐にわたっていまる。

最初に戻り、裁判権にかかわる特権では米兵が日本国内で犯罪を犯した場合、事件が「公務中」のものなら第一次裁判権は米側にある(地位協定一七条)。
この「公務中」の事件・事故は、これまで四万五千件を超えますが、軍事裁判にかけられた米兵は一人もいない。
公務外の犯罪については、第一次裁判権は日本にありますが、日本が裁判権を放棄するケースが多く、日本が裁く例はほとんどあったためしはない。

というわけで米軍の特権は、大使館員などのもつ治外法権に等しいような広範な特権であるところから、治外法権的特権と呼ばれているわけです。

米軍のこのような特権とそのもとでの傍若無人な活動は、アメリカに従属させられている「基地国家」日本の屈辱的な姿を象徴的に示しているという見解もあり、「基地国家」からの脱却は、真に独立した平和な日本をつくる上で避けることのできない課題とする見方も出来ます。

ところで、今回の三浦問題「ロス疑惑」では、2008年2月22日にアメリカの自治領、サイパンにおいて三浦は、現地に出向いていたロサンゼルス市警に殺人容疑で逮捕された。
これは、「ロス疑惑」の捜査がアメリカでは未だ進行中(アメリカでは時効制度は存在するが殺人に関しては時効は存在しない)であり、それに基づいての被告人身柄確保とされる。
アメリカ当局は、ロサンゼルスへの移送を目指していたが、被告側は日本の最高裁での無罪判決の確定を根拠として、「一事不再理」の原則を盾にアメリカ当局の身柄拘束を不当なものと見なし、ロサンゼルスへの身柄移送の中止と身柄の解放を訴えて、法廷で争った。
9月26日に裁判所は殺人罪の逮捕状は日本で判決が確定した一事不再理にあたり無効とした上で、殺人の共謀罪については日本で裁かれていないとして有効とした。

この決定がきっかけとなって三浦はロスへの身柄移送に同意し10月10日にロス市警に身柄移送した。
しかし、同日にロス市警にて三浦は死亡。

日本とアメリカの現状を考えすぎればアメリカのやりすぎではなかろうか。

「推定無罪」という事項もかかわってくるだろう。
「殺人共謀罪」についての問題が残っているならば、それは日本の問題として処理できなかったのか。
三浦氏がいかような人物であってもいい。
明らかにアメリカに踏みにじられた日本の司法の状況がここにある。

この事件では大きくこういった視点で、今回の三浦問題を論じてもらいたい。
言っておくが、日本国内で暴行殺人を犯した米兵をどうとも出来ない立場に追いやられた日本の司法が、30年近く前の事件でまたアメリカに振り回されたのだ。

30分前に電話でテロ指定国家を解除する旨を受け取って、それでも尻尾を振っているのか。
何か伝える言葉くらい持っているのではないか。

北朝鮮への物資支援国という立場はヒル米国務次官補にはずしてもらったが、これについて丁寧にお礼でも公表したらどうか?

三浦和義が悪い奴だからどうでもいいと思ったのかもしれないが、これは三浦氏の問題ではなく日本の司法の問題だ。

アメリカが日本など相手にしていないことは、とうの昔に悟ったことだろうに。

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