片腕
先だって朝日新聞の書評コーナーで筒井康隆が書いていたものだから手に取った方もいらっしゃるだろうが、わたしもミーハーの端くれとして読んでみた。
随所に納得する表現が出てきてなるほどと思わせる小説の有り様だが、どうということはないといえばそうも言える、まことに文章というものは情けない存在感で、あるところは読み手に頼るしかないものだ。
けれども女が一晩ならお貸しするといった彼女の右腕を男が家に持ち帰ってひと晩過ごすだけの話が、読ませる小説になるまでの工夫は読んでいくうちにいくつかの技巧を示してくれている。
そういう技巧が虚構に重力を持たせていく過程は妙にわくわくさせる。
それはわたしが曲がりなりにも書き手の目を持っているからかもしれないが、今更ながら筒井の感動が書き手ならではの感慨だったことを確認する。
この小説は、SFであり、幻想小説であり、そして妙に写実性を感じさせるものだが、そういうところを楽しむのならとても短いけれど十分に参考になるものだと思う。
ただ、そう記して終わりとすることにします。
ラベル: 小説
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