一本の矢印までも
彼はスペインへのギター留学という夢を見て、クラシックギターを爪弾いていた。
その彼が、わたしに話した。
そうだ、わたしは彼が気に入ってしばらく語り合ったのだった。
「イエペスなら開放弦を奏でても自分にはわかると思う」
真率なコトバだった。
そういうものかもしれないと不意に納得した。
(ちなみにイエペスとはナルシソ・イエペスのことである)
その光景をふと思い出したのは、井上の展覧会のことを知ったからだ。
なるほどと得心がいった。
不意に納得したことが得心に変わるまで随分長いときが必要だった。
知らないうちにわたしはあのときの彼のコトバを抱え込んでいたのだなあ。
マンガにもそういうことは起こる。
ここでは、この展覧会では、一本の矢印までも井上雄彦なのだった。
ラベル: 作品
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