2010年4月26日月曜日

大仏男

原宏一さんのこの小説に波長が合ってしまいました。
合わなくても面白いところに波長がドンピシャ。

読書をゆっくりできる状態に心が戻ってまいりました。
幸せなことでございます。

これからは、お世話になった皆様方のご恩に報いるため奮励努力していく所存です。

さて、それはさておき愉快な小説「大仏男」についてひとくさり。

文字情報ははかない。
視覚情報と比べればゴミのようなインパクトである。
だから、文字情報は受け手の状況にも大きく左右される。
それをガサツに、その本と読者の気が合わなければ簡単に捨てられてしまう存在だといってしまってもいいだろう。
内向的な娼婦のようなたたずまいを想像していただければ、それが一本の小説を仕立て上げる作家の在りようとなる。
この感覚のない作家はどこか大きな問題点が生じることになると思う。

「大仏男」とわたしの相性はバッチリだ。
その上、原宏一というコピーライター出身のこの御仁は、よく芸能界に通じていらっしゃる。
笑いをどう作るかもかなり正確に辿っている。
霊能者のあざとさもよくお分かりで、それほどの人だから笑いがギャップから起きるという単純にしてディープな事がらもさらりと書いておいたりする。
ギャップから笑いが起きるという指摘にわたしはギョッとなった。
わたしの新書企画の一本の鮮度が落ちてしまった気分だ。

ま、とにかく、この大仏男は人間というものに興味をもつ読者には面白いことを請合います。
メディア、霊能者、芸能事務所、…いまどきの話題が、わたしたちにとってどのようなものであるのかを
愉快なストーリーのなかで教えてくれる。

朝井リョウといい原宏一といい、才能は何かのきっかけで次々と花開く。
久しぶりに小説読みに戻ってきて、その醍醐味を味わっている。

幸せである。

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