誉田哲也という作家
それと重ねるように誉田哲也の初期作品「アクセス」を読み始める。
石田衣良は丹念に男女の心の機微を描写する。
その定点観測力は信頼に足りる。
その定点観測のもとに広がる彼の小説世界は、自分の心の動きを追ってくれているかのような確かな足音がする。
最近、安心して読める現代作家だと断じて構うまい。
一方、誉田哲也は何者か。
彼は、彼の見知らぬ小説世界に読者を拉致する。
その世界がおどろおどろしい世界かと言えば、そういうことではない。
確かに「アクセス」は、おどろおどろしいいが、そのことは重要ではない。
あの爽やかな「武士道シックスティーン」でさえも拉致された気分は残る。
彼の小説が革命的なところは、見慣れた景色だと信じていたものをまったく違って見せてしまうところにある。
これは才能である。
しかも稀有な才能である。
石田衣良は立派な作家だが、彼が描く世界はあくまでも見知った世界だ。
見知った世界を腑分けして見せて、新たな視点を教えてくれるのだ。
誉田は有無を言わせず読者をストレンジャーにする。
このまま大過なく進めば、誉田哲也は間違いなく大きな作家になる。
皆さんも追いかけてもいいのではないかと自信をもってお勧めする。
そして、彼がダメになったときは皆さんが判断すればいい。
今のところ彼は、奇跡的に秀作を生み出し続けている。
彼の才能に乾杯!
ラベル: 小説
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