2010年8月22日日曜日

ボーダー

久しぶりに垣根涼介を読んだ。
つべこべ言うことなしに、305ページに引用された文章を引用するに留めたい。

わたしはときおり自分は流れつづける一まとまりの潮流ではないかと感じることがある。堅牢な固体としての自己という概念、多くの人々があれほど重要性を持たせているアイデンティティというものよりも、わたしにはこちらのほうが好ましい。時に合わせ、、場所に合わせ、あらゆる類いの意外な組み合わせが変転していくというかたちを取りながら、必ずしも前進するわけではなく、ときには相互に反発しながら、ポリフォニックに、しかし中心となる主旋律は不在のままに。これは自由の一つのかたちである、とわたしは考えたい。

サイードである。

そうか、垣根さんもサイードを読んでいたのだなと思う。

この本は、それに成功したかどうかは別にして、この日本でエドワード・W・サイードの運動を書こうとした作品である。

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