2011年2月13日日曜日

先生とわたし

この文章に接するのは二度目となる。

わたしがこの文章に初めて接したのは、2007年雑誌「新潮3月号」だった。
その表紙に四方田犬彦「先生とわたし」(長編評論400枚一挙掲載)とあって、買ってしまったのだった。
その文章を読み始めるまで、四方田と由良君美の関係さえも、わたしは知らなかった。

そのときも、読後にそうかと浅く感動したのを覚えているが、いまこうして新潮文庫で読み始めているとこの本が、いかに端倪すべからざる物かよくわかる。

表現において最終的な判断は、いつでも受信者が担う。

そう言い切ったのは、わたしだが、この本はまさにわたしを照射し返してくる。

透明感の中に漂う四方田の哀切は、限りなく抑制されており、語られる由良との思い出も際立ったエピソードを作るという姿勢はない。

ひとつの名作として位置している作品だと思う。

けれども作品もまた読者を選ぶ。

この作品をあなたに勧めはしないし、あなたにとって重要な作品だとも言わない。

ただ、今のわたしの心にはどこまでも深く入り込んできてしまう作品であることをここに表明しておきたい。

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