2008年1月30日水曜日

五街道雲助

浅草演芸ホールの夜席のトリとして、五街道雲助をみた。
じつはこの師匠の噺を見るのも初めてなら、彼の演じた「夜鷹そば屋」も初めてでした。
いい出来でござんした。
おじいさん、おばあさんと若者の話なのだが、それぞれを演じ分ける手のひらを置くひざの位置がたまらなかった。
いいものを見て、聴いて泣けてしまった。
その前のヒザで出た太神楽「和楽社中」にも泣けた。
修行というものがその演技の後ろに見え隠れするのだ。
その修行の姿が脳裏に浮かんで泣けてくるのであった。

ああ、おいらは怠けて生きてきたなあ。
いらぬ後悔をするが、すぐさま思い直す。
いや、まだ、先はある。
死ぬ気でやってみりゃあいいさ。
ずいぶん遊んできたんだ。
もう遊ぶ必要もあるめい。
がむしゃらに前へ行けばいいんだ。
修行をするのはいつからだっていいんだから。
うまくすりゃあ、無駄に過ごした時間が生きてくるかも知れねえじゃないか。

1月の28日「浅草演芸ホール」での出来事でした。

高座がはねて、ゆっくりと人の波に遅れて外に出ると、氷雨が降っていた。
寒い夜、浅草の夜がそこにはありました。

すると、後ろから
「氷雨とオレとは同期の桜か」
なんてことをいい間でつぶやく初老の人がいた。
ふりむいて、わたしは
「志ん駒師匠じゃないですか」と語りかけた。
志ん駒師匠、ヒザ前に出て軽妙なトークで笑わせていた。

こういう反射神経が、この師匠の持ち味か。

氷雨の空を見上げて、

「氷雨とオレとは同期の桜か」

いやはや、お後がよろしいようで。

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