2008年12月18日木曜日

ブルジュ・ドバイ


ブルジュ・ドバイはメトロポリス「ドバイ」の象徴である。

知っての通り、ブルジュ・ドバイはアラブ首長国連邦最大都市ドバイに建設中の超高層ビルである。
地上162階建、尖塔高818m、軒高643.3mとなる予定であり、2009年竣工予定となっている。

すでに2007年7月21日には台北101を抜いて世界一の高さの超高層ビルとなっており、さらに2008年9月28日には高さ713.7mまで到達し、人類史上最も高い建造物となっている。

それが今、音を立てて崩れようとしている。
もちろん比喩であるが、ブルジュ・ドバイはまさに「バベルの塔」の様相を呈している。(いや「バブルの塔」か)

オイルマネーに物を言わせ、圧倒的な資金力で砂漠の中に忽然とメトロポリスを現出させようとしたドバイの構想に世界中のマネーが押し寄せた。
そして、いつのころからか、現実のドバイは仮想空間ドバイへと変貌していった。

とはいうものの全世界のクレーン車の三分の一を集めたといわれる壮大な都市計画は実際に行われていたわけであり、誰がそれを仮想空間だと思うものか。
確かに質感を持った建物がそこにはあったのだ。

しかし、それを見た人間の頭の中には別の姿が見えていた。
買われた高層マンションの部屋たちは投機対象としてであり、住居としては認識されていなかった。
彼ら投機者はそれを転売することのみで購入し、高騰したそれを転売し続けた。
そこにドバイの繁栄がある。

それが夢と消えた。

現在、世界を巻き込みながら暴風雨と化している仮想経済の崩壊はここドバイにも吹き込み、投機対象、つまりは仮想世界のおもちゃのマンションが実体へと変わりながら、下落を続けている。

ドバイでのビルディング、マンションの下落は恐ろしいスピードで進んでいる。
そのスピードには追いつけないものの、やはり投機者たちも恐ろしいスピードで引き上げている。

砂漠の中に突如出現しようとしたあのメトロポリタンは文字通り「砂上の楼閣」となろうとしている。

実体世界が仮想世界に変節するとき人はその実態を見失う。
それがここしばらく世界で行われていたことで、その見失ってきた実態と仮想との差はかくまで大きい。
そのことを仮想世界が拭い去られた後に見える実体経済で改めてわれわれは認識する。

日本では馘首、馘首と自動車産業あたりが恐ろしい勢いで首切りに専念している。
仮想に踊らされた人々に売ってきた車がいつまでも今までのように売れるわけでもあるまいに、いつまでそんな会社を後生大事に守るつもりなのだろうか。
みんなで細々と食っていく発想はないのだろうか。

首を切られれば、野垂れ死にまであとわずかだ。
かく言うわたしも同じ境遇。

華々しく死にたいものだ。

それが出来ないのなら細々とどこかで静かに暮らしたいものだ。

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