2009年8月22日土曜日

剣岳 点の記


「剣岳 点の記」を読む。

研ぎ澄まされた山岳小説だった。

小説というかぎりは、そのどこかに作者の想像力が入り込んでくるのだが、その入り込んでくるはずの想像力にきわめて禁欲的な作品だ。

この種の作品は、読んだ瞬間に大きな感動は来ないが後から追いかけてじわじわとそのよさが迫ってくる。
それには、多少とも小説を読んでこなければならないのかもしれないが、なんにしろ見る側にも少しの努力を要求するものだ。
(もちりん、この場合の見るは、聞くにもそれ以外の受信にも変わる)

この頃のサービス精神の多い作品は楽に感動させてくれて、その感動が薄っぺらであることを忘れてしまうほどだ。
そういう作品があることは楽しいことだが、時にはこういうストイックな作品を読みたいものだ。

ご存知のようにこの作品は今年、映画化されているが、この作品を読んで映画を撮りたいと思った気持ちはなかなかに憶測しがたい。
映像的な描写が少ないわけではないのだが、それ以上に登場する人物の「心の記」という部分に強く惹かれるからだ。

もっとも、これはまったく個人的な鑑賞で、自分に映像的に作品が見えないことを哀しむほうがいいのかもしれない。

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