2009年11月16日月曜日

老師と少年


この本は、名作だと思う。
著者がこの問題と長く付き合ってきたことが本当にわかる。
長く深くだ。
けれどもこの本を必要としているのは万人ではない。
この本が名作であると感じるのは一部の人だと思う。
その一部の人が増えつつあるとしたら、それはこの時代の宿命だろう。
この時代の必要とするものが、
「生きる意味より死なない工夫」
ならば、この本はとても大切な本になってくるだろう。
生存する危機と生きる不安は圧倒的に違う。
貧困率とは生存する危機に対する指標のつもりだろうが、実は生きる不安と密接につながっている。
この時代は豊かになった。
その豊かさが生きる不安の浮き彫りにつながっている。
生きる不安はそれを感じる人もいれば感じることのないまま生き抜けていく人もいる。
生き抜けていければそれでいい。
もしそうでないのならば、生きる不安から目が放せないのなら、この本がわずかながら助けてくれる。
わずかながらと書くのはこの本の中にはその解決策が示されてはいないからだ。
示されていないだけではなくもっとショッキングなことが書かれている。
けれどもそのショックを通り抜ける以外に道はないのかもしれない。
今のわたしにもそう思える。
死なない工夫というからには、放っておけば死んでしまうかもしれない人間を書いているのだ。
なんとまあ人は脆弱なものなのだろう。
そして、この社会はその脆弱さに目をふさいだ人たちが作っているとしたら、生き難い人たちの存在が少しは見えてくるだろうか。

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム