赤朽葉家の伝説
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批判をするのならそのものの、その人の最も高い地点を狙い撃つ、このこと以外に成果は上がるまい。
重箱の隅をつついて出てくるものなどたかが知れているし、肝心なものはそこにはない。
泰山を鳴動させればねずみの一匹も出てこようが、重箱の隅ではねえ。
というわけで、この小説の細かな欠点をあげつらうことはしない。
ただ、あえて書けば時間が大事な人は無理に読むような本ではない。
本好きならば読む価値はある。
この本はまだ作者が初々しく、この小説を書いた際の努力があちこちに残っている。
あきらかに一生懸命に書いている姿が透けて見えてくる。
その残滓は何ともすがすがしく拍手したくなる。
これは赤朽葉家の三代の女性を通して書かれた庶民の歴史である。
その歴史観はこの作者なりのもので、ここにも作者の真摯さが顔を覗かせる。
何しろこの作者はとてもまじめな女性なのだ。
もし時間があれば読んでみてもいいのではないかと思う。
ちなみに彼女はこの作品の二年後に、『私の男』で第138回直木三十五賞を受賞している。
ラベル: 小説
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