2009年12月19日土曜日

パラドックス13

「パラドックス13」は今年度出版された東野圭吾の著作だが、それほど大きな評判を呼ばなかった。
今年に限って言えば、「新参者」が彼の代表作となる。
いや、今年に限らなくても「新参者」は、彼の代表作だろう。

で、話は「パラドックス13」だが、これは時間に関するSFもので、この分野は東野氏は得てではないようだ。

北村薫に時と人三部作があって、「スキップ」「ターン」「リセット」、これらと比べればそれははっきりとしてくる。
しかし、こういう得て不得手は誰しもあるもので、そのことをわざわざ取り上げて、勝ち誇ったように言うようなことではない。

むしろ、不得手なこの分野でもこれくらいまでの作品に仕上げることが出来る力量をほめるべきだろう。
いかに不得手であっても、それを出来の悪さの口実には出来ない。
それでは「東野圭吾」の名前が泣くというものだろう。

このやっかいな対象を彼なりにうまく仕上げていることに心を留めておきたい。

東野圭吾という名を背負い書き続けている人間の苦労のわかる作品である。
ここに繰り返すことは、わずかに心痛むが、この「パラドックス13」という作品は、何と言うこともない作品である。
ただ、これだけの題材にリアリティを与えながら、あれだけの長さに仕上げたのは書き続けてきた人気作家の矜持のなせる業であった。

なんのかんの言われようとも、なかなか立派な姿勢であることは間違いない。

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