2010年3月10日水曜日

素晴らしきコピー

1914年、探検家のアーネスト・シャクルトン卿がロンドンの新聞に広告を出したが、その広告のインパクトは衝撃だった。

南極探検隊員募集広告は以下のようだ。


探検隊員求む。
至難の旅。
わずかな報酬。
極寒。
暗黒の長い月日。
絶えざる危険。
生還の保証無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。


歴史的に非常に有名なこの広告は、わかりやすくただちにとび込んでくる。
コピーの見本ともされる上のフレーズはしびれるところがあるし、ダイレクトである。
広告とはそうありたい。

けれども、文章となるともう少し厄介になる。
須賀敦子がほめる書簡を紹介してみたい。

イタリアの国民的詩人カルドゥッチの後継者としてボローニャ大学のイタリア文学教授にパスコリを慫慂するもので、当時の大学総長が出したものである。


「親愛なるパスコリ、単刀直入に聞く。
もし君がカルドッチ君から直接、ボローニャ大学のイタリア文学正教授のポストを継ぐように選ばれたとしたら、君は任命およびポストを受諾するだろうか。
条件だの躊躇だのと言わずに、ただ簡潔に諾否をこたえてもらいたい」


これに対し須賀さんは「感動をさそう」とのみ書き記しているが、わたしにはそれが絶賛のように聞こえる。

彼女は何ゆえにこの書簡をほめたか。

そこが、それ、あなた、文章というものなのですよ。

ラベル:

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム