2010年4月5日月曜日

傘は天下のまわりもの

会社に勤めだしてから3本の傘を手に入れた。
むかし、会社に勤めていたころも無数に傘を手に入れた。

そのなかの一級品は森英恵デザインのものだ。
あれが電車の中に置き忘れられているのを見つけたときには、若干興奮した。
わからぬように時間をかけて傘のそばまでいって、傘の所有者がいないかどうか、さらに念入りに時間をかけて確かめた。

その傘を手に会社に着いたあと、戦利品をためつすがめつ眺めていて、改めて思った。
美しい傘だ。

その晩、その傘を持って勇躍自宅に着くなり、女房に報告すると彼女の顔が一気にほころんだ。
彼女によると、少なくとも三万円はするというのだ。
その後、嬉しそうに彼女はその傘を使っていたが、そのとき云った言葉が今でも声音まで記憶に残る。

よかったね、
「傘は天下のまわりもの」だね。

嬉しそうだったなあ、あのときの彼女。

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