2007年10月14日日曜日

フェイスフル スパイ



JR病院で読んだ本の一冊目は「フェイスフル スパイ」です。
この作品は、ここで紹介しようと思わなかったのですが、思いのほかだったのです。

「フェイスフル スパイ」は2007年度MWAの新人賞で、とても評判を呼んでいるものです。
評価の高い作品だと聞いていたのですが、なるほどそうでした。
わたしはこの手の作品はあまり好まないのでそうそう作品世界に引き込まれることもないのですが、ラストへと続く一連の流れには納得させられました。
最後の100ページあまりと言っていいでしょうか。
十分なエンターテインメントだったのです。

この作品ではあのアフガン、イラクへのアメリカ侵攻が書かれているのですが、この作者アレックス・ベレンソンのこの戦争に対する位置とわたしの位置は違う。
しかし、作品の価値は政治的立場から判断してはならない。

似たような話だが、ハリウッド映画の多くは批判されて仕方がないものだが、これもまたその作品批判の中心にあるのは政治的なものであってはならないとするのがわたしの立ち位置だ。
多くのハリウッド映画は彼らの文法のもとに作られた鋳型に設定や役者や音楽に少しだけ味付けをして流し込んでいく、その安直さが批判されるべき中心だ。
しかも自国の政治的プロパガンダとして使っている。(しかし、この批判は作品批判ではなくアメリカ批判だ、このことに注意しておきたい。)

ともかく、「フェイスフル スパイ」にわたしは具体的ないくつかのアメリカ人の姿とイスラムの人々の思いがどのように具現化するかを教えられた。
情報的にもストーリー的にも新人作品として秀逸だと思う。
それが巷間言われるようにジョン・ル・カレに並び立つ可能性をもつ物かどうかをわたしは知らないが、思いのほかの収穫だったのでここに記しておきたい。
記さないと不公平になってしまうと思ったからです。

というのは、わたしが本当に書きたかったのはそのときに読んだもう一冊の感想だからです。
その本を心ある人に読んでいただきたい作品として紹介したく思っているのです。

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