2008年3月27日木曜日

生活のアクセント、そして「へなちょこ同盟」へ



きらきらと輝く金目のあらが手に入ったので煮付けにした。
日々その生命力を滞らせることなく成長する山椒の若芽を今日も摘んで雑魚といっしょに佃煮を作った。

料理は生活のアクセントだ。
いっしょに料理を囲む愉快な仲間がいればさらにアクセントとしては上質になる。
幸せな夕餉は幸福のひとつの至上だろう。

そういえば同じことを車寅次郎が映画の中で言っていた。(たしか、志村喬がマドンナの父で大学教授だった。タイトルは調べるのがちょいと厄介で、失礼する。
ご存知の方はお教えください「tonbomaru55@yahoo.co.jp」)

散歩もアクセントなら、こうやってブログを書くのもアクセントだ。
さらに言えば、酒もまたアクセントだと言えなくもないが、深入りするとアクセトのボーダーは知らぬ間に越えてしまう。
これは酒に限ったことではない。
アクセントとして生活に位置するものすべて(容易に越えてしまう)ボーダーのなかにいることを条件とする。

そのアクセント内でのわたしの料理だが、「あら煮」のポイントはあまり水を使わないところにあり、(代わりに酒がよく、酒が惜しいなら出汁にするのがいい)山椒の佃煮は一度湯でこぼしておいて、それを水にさらし、適当に味付けして煮詰めていくのだが、煮詰まったところで水を少々足すといい。(煮詰めることで味をしっかりとつけ、水を足すことでやわらかい佃煮とする)

で、どうなんだと聞かれれば、それだけのことで、そんなふうなことを考えながら料理をするのはなかなか楽しいものだということだ。

さて、そんなふうに暮らしているわたしが内田樹(「たつる」と読みます)さんの本を読んでいると「弱者」の定義として「『受益機会そのもの』から疎外されている者」とあって、なるほどと思った。
こう定義すると弱者が客観的に定義される。

対して、わたしの言う「弱者」「弱きもの」は、あまり客観性をもっておらず、仲間内で通じればいいだろう(あなたとわたしがわかればいいだろう)程度のもので、この定義とは少しずれてしまう。
あえて、比較できるように並べてみれば、「受益機会を得るために、あるいは受益するためには障害となる不自由なものを身のうちにもってしまった者」「……もってしまったと思っている者」というふうになるのか。

したがって、何もわからぬ人から見れば、もっともわれわれの周りにいる人といえば、何もわからぬ人たちがほとんどなので(そしてわからぬことにおいて「受益機会」を獲得するという処世が達成されているのだが)、こういう注釈をつける必要はなく、たいていは「このわがままものが」と思われてしまう。
しかし、それはほんとうに「わがまま」なのかというところから本格的な話は始まるし、一部そのような観点からものを言う人もでてきている。
そういうところは乱暴にうっちゃらかしてしまえば、大きな問題はその「わがまま」がある程度妥当なものだとして、あなたはどうやって生きていきますかというその後にもある。

わたしの企図する「へなちょこ同盟」はどうやって生きていくかの問題に対するひとつの答としてある。
「へなちょこ」というぐらいだから何もかもいい加減な同盟だが、いい加減にいっしょにいられることは可能かという大きな問題もはらんでいる。

ちなみに「へなちょこ」は「腑抜け(ふぬけ)」とは違うが、「腑抜け」というのもわたしは嫌いではない。
「腑抜け」は男が女にぞっこんになるときの形容だが(女が男に首っ丈のときには使わない)、「腑抜け」のままやっていけるのなら、それはそれで極楽だろうと思う。
「腑抜け」には視力はないもので、何がなんだかわからなくなっている。

北村太郎が田村隆一を評して「田村が女にもてるのは女にほれないからだ」と言っているが、これは奥深いところのある発言で、田村さんは視力のいい人でほれることができなかったという指摘だ。

「ほれる」とは「目が見えなくなる状態」で、視力のいい人間は「ほれる」ことができない。
というわけで、ウィスキーを田村氏は呷ってみるのだが、アルコールでは「腑抜け」にはならない。
アルコールは短時間で冷めるから「ほれる」状態を長時間維持できないのだ。
そこでアルコール中毒へとなだれ込むことで「ほれたかのごとき状態」を作り出すのだが、こういうアル中にほれる女はまれで、そのまれな女を呼び寄せるところが田村隆一であったいうわけだ。

ここまででわたしは「田村が女にほれない」は説明したが、「なぜ女にもてるか」を説明していない。
これはわたしの守備範囲ではないので深くは終えないが、「女は『腑抜け』が嫌いだ」ということくらいは指摘しておいてもいいだろう。

(ところで、田村さんについて書いたこの部分、いうまでもなく田村隆一のほんのわずかな面を叙述したに過ぎず、田村隆一は別の場所にスックリと立っていることを今日のブログの最後に確認しておきたい)

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