山椒の佃煮
自宅の小さな庭にある立派な山椒の木は、この中古の家を購入した平成二年、父が挿し木をしたものだ。
あまり日の当たらぬここでも
「山椒なら育つやろ」
父はたっぷりと水をかけた小さな木っ端のような山椒を見ながら、わたしに言った。
思えば、父は野菜や花や樹木をよく育て、カナリヤやチャボやウサギや犬を丹念に飼っていた。
人とはあまりしゃべらない人だった。
いまのわたしが人とはあまりしゃべりたくない気分は通奏低音のように父とつながっているかもしれない。
ようやく身体に不自由を感じ出したこの歳になって、父のことを懐かしく思い出すわたしである。
そのたびに植物や動物とのつきあい方をもっとよく教わっておけばよかったと思う。
なんにしろ過ぎ去ってしまってしみじみと後悔するのが人の常で、仕方なくわたしはものの本を見たり、ネットで調べたりして少しずつ花や木とつきあい始めている。
動物ともつき合うようになるのかもしれない。
写真は、平成二年に父が植えた山椒の若葉で作った佃煮である。
醤油を思い切り控えてあるので日持ちが悪いのだろうが、実にこれがうまい。
ご飯のおかずにはなっても酒の肴としては多少頼りないところも今のわたしに合っている。
酒をまた飲むようになったら、もう少し強い味付けのものも少しだけ作ろうかと思っている。
そのときは、あなたとともに杯を傾けるといいかもしれない。
ラベル: 食べ物
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