2008年7月15日火曜日

うまやはし日記


吉岡実の最後の本となる「うまやはし日記」を図書館から借り出して、ぱらぱらめくっているが、遠く離れた人の本として、なんともない内容がつらつらと書かれているだけの印象なのだが、よくよく見ていくと、あちらこちらに吉岡実足るべき目線が散逸していることがわかる。

こういった本は、特装本を本人から手渡されて持っているに限るのであって、読めばいいというものではない。
手元においておかなければならない本というものがある。(もちろん本ばかりではないのだが…)
この「うまやはし日記」にも特装本があり、わたしはそれを見たことはないが、おそらく装丁家としても知られていた吉岡実氏が愛してやまなかった、あの適当な粗さと光沢を持つ麻布、特上シュランクではなかっただろうか、と想像をめぐらしている。

付け加えておけば、この「うまやはし日記」は、本文のデザインもまたすこぶる見事で、何も読まなくてもいい(美しい)本だとわかる。
しかし、裏腹なことに内容に立ち入ってみると、なんということはない。

おそらく、彼に近しい人たちに映る何ものかがわたしには見えてこないのだろうと思う。

これは哀しいことだが、受信者の責任ではなく、運命の悲哀である。

あなたが、美しいものを目にできる人々とこの世界の生を共有できることを願ってやまない。
この世界が美しく目に映る瞬間が、あなたに数多く訪れることを思っている。

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