2009年8月3日月曜日

飲み会で出会った青年

青年は、産まれてすでに25の年を重ねていたが、すでに結婚をし、その結婚も5ねん前の出来事だった。

青年の結婚のきっかけは15際のときに遡る。
その年に彼は、父の故郷である岡山に行く。
そしてカミさんになるべき女と出会う。

その出会いがいかなるものだったかは知らない。地方銀行に勤めるその女をとにかく少年は見初める。
この女と結婚しようと、瞬間に思う。
無知のなせる業だ。

なぜ少年がそのように思ったかは不可解だが、概ねわれわれの人生はそのように出来ている。
少年は、ぼくはまだ若いが、ぼくが20歳になったら結婚しようと約束する。
突拍子のない申し出は、そのときに成立してしまった。
場所と空気がそのような奇跡を起こしたのかもしれない。

彼女は23歳だった。
彼女が美しい人であったかどうかは知らないが、少年にとってかけがえのない美しさをもっていたに違いない。
ひとはそのように誤解の積み木細工の中で生きていく。

5年後彼らは結婚する。
その夜、わたしの前に座った青年は、それから5年たった青年だった。

そして、とんでもない幸せなことにいまや青年と化した少年は今でもその女を愛し続けている。
これは、行幸であるし、奇跡でもある。

この話を聞いたとき、一瞬、その場が輝いた。
そういう話がたまにある。
光源となるような話だ。

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