2009年7月30日木曜日

おれは権現


久しぶりに司馬遼太郎の本を読んでみた。
短編集であったし、よく知った司馬さんの文体ではあったが、ひとつ意外なことを知った。

この人は冷たい人であったのだなあ、ということだ。

逆に言えば、この人はとても温かい人なのかもしれない。

その中に書かれる人々は、彼らしく、彼女らしく生きてはいるが、どこか無常感が漂う。
司馬さんの文章の中、達成感に意味が重く乗せられることはない。(この短編集では)

ただ、そういう風に生きたとだけ書いてある。

そして、それを読んだとき、ふと、わたしの肩の荷が下りた。

ただ、そういう風に生きさえすればいいだけのことで、人はそのようにこの世と交わり死んでいくものなのだという感じが、無常でありながら、そういうものかという説得感を持っていた。

司馬遼太郎の目がそこまで映し出していることは、わたしにはいままでわからなかった。

なるほど、ただそのように生きただけのことであった。

…ということか。

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