2009年7月30日木曜日

あなたにとって…

日本に優秀なインタビュアーは少ない。
(胸をはれるのは久米宏くらいのものか、彼はよく勉強している)

多くのインタビュアーは、変わりばえのしない質問に終始する。
その中にあって特に目立つのは最後の質問。
インタビュイーのしているスポーツや仕事に対して、

「あなたにとって …… とは一言で言うとなんですか?」

と聞く締め方である。

聞くたびにこいつはバカではないかと思ってきた。

そして、その答えはたいてい

「……は、わたしの人生そのものですかね」

といった類の解答が集中する。

この解答にも、なんだかなという思いがあったがあったが、ようやくわかった。

それはそうなのだ。
彼なり彼女にとってそのことは人生なのだ。

これからはいつもの話。

白鳳は相撲によって自分の人生の虚構を組み立ててきた。
イチローは野球によって自分の人生の虚構を組み立ててきた。
羽生は将棋によって自分の人生の虚構を組み立ててきた。

それがなんであってもかまわない。
ひとは、ある眼鏡を通して人生を組み立てる。
その眼鏡がなければ、提供された人生に自分の軌道を合わせるしかない。
これを普通の生き方というが、この普通の生き方が愉快でなければその社会は歪になっているのだろうというのがわたしの見方だ。

それはともかく、一部の職人的な人々はあるものを通して自分の人生を組み立てる。
良くも悪くもそれが彼らの生き方であるし、そこに成功も失敗もない。
人はそうやって一生夢を見て生きてもいけるのだ。

その夢を見た彼らに夢を見させてくれたものがあなたにとって何かと問えば、それは人生そのものに決まっている。
その夢こそが人生を成り立たせてくれたものなのだから。

幸せな人生と呼んでいいのかもしれない。

インタビュアーの稚拙な質問ではあったが、あの最後の質問に対するインタビュイーの答に人生を少し垣間見たような気がした。

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