2009年8月12日水曜日

かぶと


池袋「かぶと」のご主人は、昔、新宿思い出通りの「かぶと」で修行をし、独立した方だ。
口は存分に悪いが、味は申し分なく、いいものを出す。

小三治の職人としてのよさを聞いた帰るさ、ふとあの職人に会ってみようと「かぶと」の岩井さんのところへ足を運んだ。
相変わらずの職人ぶりで、うなぎの臓物を一通り焼いてもらった。
その際に紛れ込ませたのが、天然もので、この店では時おり天然ものを出してくる。

この天然ものがうまい。

それはそうだろう、ほとんどのうなぎは養殖で、しかも利益を出すために餌の値段を抑える。
この餌というものは大事で、こいつが悪いととんでもない代物になる。

それが、中国産や台湾産、そして日本の一部のものだ。

うなぎの安い高いはこの餌によるもので、有害かどうかもこの餌による。
有害でないものもいやな脂っこさを感じれば餌が悪いことになる。

いいうなぎの高さは基本的にこの餌のよさによるもので、その一方に別格の天然ものがある。

マア、その晩は岩井さんの悪態を聞きながら、その天然物の串を楽しんだ。
もっとも、わたしは飲めば少食になるので(飲まなくても最近は少食なのだが)、白焼きや蒲焼きを食べることなく早々と店を出ることになるのだが、いつになく贅沢な酒だった。

けれども、満足のいくものでもあった。

今度寄るときは、小三治の書いた文庫「ば・い・く」でももって行ってやろうかと思っている。
悪態はつくが、いい奴なのである。

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