2009年8月25日火曜日

短編小説

「聖女の救済」の項で書き忘れていたことがあるので書き足しておきます。

短編小説のなかには一つだけのことを盛り込めと指摘したのは吉行だが、(もちろん多くの人が知っている心得だろうが)「聖女の救済」は長編であるにもかかわらず終始ひとつのことを主張していく。
そのひとつのことが、トリックへと主人公を向かわせている。

長編にもかかわらず、一つのことに絞って書き込んでいくのが、東野小説の特徴で、それがゆえにとても読みやすくなっている。
ページターナーの技であろう。

そして、ひとつのことに絞りながらそのひとつのことの周りに細部を書き込んでいく。
軽くなりすぎないためだ。

なかなかもって東野氏はたくらみの多い作家なのだ。
わたしは取り立てて彼のファンではないが、池波正太郎を思うがごとく彼の技法は十分に評価している。

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