2007年9月19日水曜日

罪なき寓話

愛を愛と呼べない自分にひとつだけ言い聞かせておきたいことがある。
そんな自身への孤独な思いが、オレのなかにある。

愛が愛として、ただ愛だけで、だれの力も借りずに、
その場にスックリと立つためには何が必要なのだろうか。

すこし前、美しい女をこの手にしていた。
美しいだけがとりえのその女は自分の美しさが武器だと理解した。
その武器の脆弱さも知らずに。
やがて女の前に例に違わぬあほなやくざの親分が登場する。
彼女の言によると以下のようになる。

俺の女になれ。
マンションを買い与える。
あと、毎月20万だ、それでいいだろうが。

女は迷った。
迷ったところが可愛いが、その可愛さを知るものはオレ以外にはいない。
女はオレに言う。
あなただったら、毎月の20万だけでいい。
あなたの女にして。

念のために言っておく。
これからさきは茶番だ。
茶番である哀しき現実の話だ。

女の申し出をオレは断った。
そうだろう。
オレは誰かをそこまでは愛しはしない。
美しき形象をもつおまえにも愛は生まれない。
この話の核心は愛のないオレにあるのだろうか。
それとも東京という街にあるのだろうか。

女の携帯につながらなくなったのは、その数日あとだ。

いまはどうしているのだろう。

女への思いのないオレは、まとわりつく女の指だけを覚えている。
大連から来た美しき化生。
オレがそばにいればシアワセにできたのだろうか。
ふとそんなことも思うが、すべてはあわい水泡だ。
とどまることはない。

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