2007年12月20日木曜日

さらに昔の作品を

以前にも書いたが、昔の自分というのは不思議な存在で、半分以上他人で、少し自分であるような、なんにしろ落ち着いて眺めてみれば奇妙な存在である。

さらに引き続き昔の自分が書いたものを載せてみる。
だれにも知られないのは哀れだからね。



「ずっと以前に別れた兄貴のように」


「酒はやめたほうがいい」
とずっと以前に別れた兄貴のように
あんたが諭した
ほこりをかぶった弟の声で
ぼくは
「やめるよ」
とうなづいた

次の日
ぼくは一本さげてあんたを訪れる

ふだんのように
あんたはぼくを迎える
ふだんのようにコップをふたつ
テーブルの上に

「こいつはうまいね いい酒だ」
「そうだろう 神亀中汲み だぜ」

二人とも
昨日のことを
忘れてしまったように
呑む

酔う 酔う 酔う

でも忘れちゃいなかった
ぼくたちのあのやり取りは嘘っぱちじゃなかった

酔いつぶれそうになったあんたが云う

「攻めの酒だね」

ぼくは
ずっと以前に別れた兄貴に
答えるように云う

「そうさ
 守りの酒は棄てたからね」

いつもどおりの飲んだくれを
あんたの女房が
笑って見ている

「昨日の今日なのにね」

何もわからぬ
あんたの一番下の女の子に
話しかけている

「わかるもんか おまえらに」

亭主 怒る

「わかるもんか おまえらに」

客も 怒る

呵呵三笑

夜は更けていく

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