2007年12月26日水曜日

夜明けの街で


潰すような暇もないのに、暇潰しに東野圭吾の「夜明けの街で」を読んでしまった。
まあ、読んでも読まなくてもいいような本だ。
それなりに楽しませることは、たしかだが、読まないと困るような類のものではない。
それでも読ませる工夫のあるところに、東野のプロであるゆえんを深く感じた。

少少彼に厳しいのは、いまわたしの手元にあり、つらつら読んでいるのが「トニオ・クレエゲル」であるせいでもあるだろう。
こういう作品と、並べられれば、誰だって困る。
まあ、ドストエフスキーなら困らないだろうが、あと、リョサとかさ。

てなわけで、もう少しだけ、「夜明けの街で」に言及しておけば、よく不倫をする心理に踏み込んで書けている。
こういう細かいところに作家の力量はあるので、東野はがんばっているなと思った。
しかし、サスペンスにもっていくのが、いかにも大変だった。
あれは、不倫を書ききってしまえばよかったのだろう、と思う。

まあ、失敗もあるさ。
それでも読み手に損をしたと感じさせないところに東野のプロ性はある。
立派なものだ。

彼には「白夜行」があるので、心配はいらない。
「容疑者Xへの献身」は難しい。
連条三紀彦「戻り川心中」があるからね。

いろいろあるが、とにかく、東野さんはがんばって書いている。

さて、わたしの「真夜中の瀧の音」は、一月末には完成するが、いかほどのものだろう。
本人にもわからないが、駄作にはしたくないものだ。

ねえ、T島くん。

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