2008年5月12日月曜日

食べ物の本


料理本といえば

●「壇流クッキング」
 (息子の太郎の書いた「新・壇流クッキング」はこれのまったくの真似で目を覆いたくなる。しかも文章に 闊達さがない。闊達さのない「壇流クッキング」などというものは、おまえのいない人生のようなものだよ な)

●「食は広州にあり」邱 永漢著

●「私の食物誌」吉田健一著(吉田氏のものは別の作品を推す方もおられるだろう)

あたりに相場は決まっており、これに別格として水上勉氏の「土を喰らう日々」、ノンフィクションではあるが、海老沢泰久「美味礼賛」を加えれば十分ではないかと思っていたのだが、ここに新しい本を知った。

知ったといっても晶文社からこの本「美食文化論」(辻芳樹と木村結子の共著)が刊行されたのは2002年4月5日、まことにものを知らない人間への情報伝達速度とはゆったりしたもので苦笑いしてしまいたくなる。(それでも拙速よりはましではないかと自分を励ますとしようか)

この本の辻芳樹氏は「美味礼賛」の主人公辻静雄氏のご子息で、彼に対する辻静雄の英才教育はとみに知られたところである。
ま、それはともかくこの本は格調高い。
その理由は「あとがき」で辻芳樹氏も指摘されているが、ライターの木村結子さんがただ者ではないからである。
もし、料理に(いや食文化か)興味がある方ならご一読を勧める。
グルメ評論家の志の低さがよくおわかりになるだろう。

しかし、声を荒げて彼らを責めるのも大人気ないことで(大人気ないわたしが言うのもなんですが)彼らのなかにあっても燦然と辻静雄氏は輝いているし、彼の著作をバイブルのようにしている人もいる。
(山本益弘氏における「パリの料亭」のようなことだ)

ああ、そうそう料理の本で「辻静雄選集」全三巻(ちくま文庫)は、あの本はどう、この本はどう、という前の話だからあえて紹介していないのだよ。

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