雪崩
数日間、嫉妬のなかにいた。
それも超弩級のやつだ。
久しく嫉妬などというものに縁のなかったものだから、こいつには困った。
あのジェラシーというものは本格的になればなるほど雪崩のように襲ってくる。
したがってこざ賢い理屈など瞬く間に飲み込まれてしまう。
後はサバイバルナイフを後生大事に抱え込んで、ひたすら雪面に顔を出す努力をする。
このジェラシー、一度目はわが劣情からでたもので、こんな程度でと馬鹿にしていたら、地響きのようなものが迫りきてあっという間に巻き込まれてしまった。
こうなれば、あとは過ぎ去るのを待つのが処世のおきてで、つらつら理屈を考え出そうなどしたら、さらに泥沼に入っていく。
さらに悪いことに、いや結果としてはそれで救われたのだが次にもうひとつのジェラシーが襲ってきて、こいつの出所は女性であった。
いま思い返すとこちらのほうは幾分規模が小さくて、通り過ぎるのにあまり長い時間はかからなかった。
といっても二三日はかかったんだぜ。
というわけで、ブログを書くこともなく、サバイバルナイフ(=酒とクスリの二本立て)を必死に握り締めて過ごしてきたのだ。
そのときに雪崩だとか激流のごときものが、人の身体には走っていて、そいつが噴出した際には、ただただ耐えるしかないのだと感じた。
ここで嫉妬にしぼって考えれば、喜怒哀楽で言えばおそらく怒に属するものなのだろうが、そこには哀の要素もあるし、形はいびつになるのだろうが、喜びや楽しみもわずかに変形してある。
それはよくよく眺めて見なければならない要素だが、冷たい雪の中に潜みながらそんなことまで考えてしまったよ。
劣情から始まったジェラシーはーそんなところまでオレを流し、見知らぬ場所として顔を出した先に真白い景色を見せていた。
その後に襲い来た女の嫉妬はそれとはだいぶ違ったものではあったが、それでもはっきりと女のなかに起こる雪崩をオレはしっかりと眼の端で捕らえていたのだ。
助かりはしたし、その意味で十分よかったのだが、自分の人生を自分の感情に翻弄されるというのは、いやなものではあったなあ。
人のココロのうちにも雪崩があることを知ったよ。
そいつは思っているよりずっと恐ろしいもので、会わないに越したことはない。
ラベル: 日常
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