2008年9月27日土曜日

鬼のように勝ち抜いてきた羽生が止まる


二十五日から神奈川県箱根町のホテル花月園で行われていた将棋の第四十九期王位戦七番勝負の最終局、第七局は二十六日午後六時四十一分、後手番の深浦康市王位(36)が100手で羽生善治名人(38)=棋聖、王座、王将=を下し、四勝三敗でタイトルを初防衛した。

持ち時間8時間のうち、残り時間は羽生1分、深浦18分。

深浦は二〇〇七年度の前期、初タイトルとなる王位を羽生から奪った。今期は三勝一敗から連敗したものの、最終局で、好調が続いていた羽生の挑戦を奇しくもはね返した。羽生は六年ぶりの五冠を逃し、深浦は今回の防衛により、二十六日付で九段に昇段した。

鬼のような強さの羽生が止まった。
このまま再度の七冠もあろうかと思っていたが、深浦強し、現在進行形の王座戦は羽生の防衛可能性が強く、羽生は五冠を獲得し、そのまま渡辺との竜王戦に突入する。
ここは全力を持って羽生に当たっていかなければ、しばらくは最後の羽生時代が続くだろう。

しかし、勝負事というのはあくまでも強いものが強く、そこに心の問題も入ってきており、負けたものの切なさは部外者から見て遠く離れて見えない。
恐ろしい話だと思う。

少し前にイチローと松井の対談を見たが、イチローがワールドシリーズの松井が外角から入ってくる右投手のカーブに空振りしたことをほめていたことに痛く感動した。
あのときに打った安打でもホームランでもなく空振りをイチローはほめた。

その後に付け加えたのが、「しかしこんな見方を観客に要求するのはかわいそうだ」というひと言だ。
かわいそうではあるけれど、観客ではない当事者であるイチローはそういうバッティングを追及していくのであろう。

勝負事の当事者は常にそのような宿命を持つ。
その意識の深さが勝負に賭ける者の強さの何パーセントかを占めるというのは本当であろう。
事実、プロの将棋指しでありながら、ほぼ勝負を降りている棋士がいることをわたしは知っている。
それでも食っていけるのならば、それはそれでひとつの選択だあろう。

プロになれずに散っていく青年たちのその後の人生の乗り越え方とは違う次元の話だ。

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