砂の器
そうすると、この小説、実に丹念に書き込まれているのである。
以前は、橋本忍の脚本により立ち上がったに見えた小説だったが、そうではなかった。
小説としてすでに出来上がっていたのである。
調査したものたちを小説のあちらこちらにちりばめ、その情報量の多さを誇るようなことはしない。
なんとまあ、あの男が謙虚なことか。
小説を書くということに関しては、松本先生、実によく知っていらっしゃる。
そして感動に関して禁欲的だ。
これが、映画とのもっとも大きな違いだろう。
寡黙、禁欲にして感動的。
小説とはこういう世界だったと改めて教えられる。
数多くの問題がその中に封じ込められた名作といっていいのではないだろうか。
もし公言すれば、多すぎる問題を含んでいることが欠点になるのではないかということだが、これは実は作家よりも読者の問題なのだろう。
映画と小説との違いを改めて教えられた。
あの性格の悪しき男に感謝したい。
ラベル: 小説
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